【お役立ちミニ講座Vol.26】変形労働時間制について徹底解説!その3:フレックスタイム制について

みなさん、こんにちは🌰日の入りの時間が段々早くなっていて、仕事が終わるころには真っ暗になっていると年末が近づいてるんだなあとひしひしと感じます。朝晩も大分涼しくなりましたね。今年中に県外へのプチ旅行に行ってみたいものです。さて、今回は変形労働時間制について、最後のパートとして「フレックスタイム制」についてお話しようと思います。

なんだかフレックスタイム制って聞くと、都会の高層ビルの中でお仕事している人たちのイメージがあります!しろ吉の周りではあまり聞いたことがありません。

そうねえ、オフィスこころは個人事業主なのでこれに近いものがあるけどね💦みんなが働いている時間に休んだり、みんなが休んでいる時間に働いていたり( ´艸`)雇用関係にあたっても、こういった自由な働き方を許容する制度として「フレックスタイム制」というのがあります。最近ではテレワークが浸透してきているので、労働者が働く時間をある程度自由に選択しても大丈夫なお仕事の場合は、これを導入してみるのもありですね。

今の会社では無理だけど、ずきんも転職していつかそんな働き方してみたいなあ。そのときのために、今日はよく聞いておきます!

なお、補足ですが、変形労働時間制には最後にもうひとつ「1週間単位の非定型的労働時間制」があります。規模30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店の事業においいて、労使協定で、1週間単位で毎日の労働時間(但し、上限は1日10時間まで)を、1週間が40時間未満になるようにすれば、弾力的に定めることができる制度です。お役立ちミニ講座では割愛しますが、導入の際は労使協定の締結と届出が必要なことだけはご注意くださいね。

フレックスタイム制の基本的な仕組みを理解しよう!

フレックスタイム制とは

一定の期間についてあらかじめ定められた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度。労働者は仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くことができます。

フレキシブルタイム コアタイム 休憩 コアタイム フレキシブルタイム
いつ出社してもよい時間帯      ←必ず勤務しなければならない時間帯→ いつ退社してもよい時間帯

※「フレキシブルタイム」や「コアタイム」は必ず設けなければいけないものではなく、完全に労働者が働く時間も自由に選択できるようにすることも可能です。
ただしその場合でも所定休日は予め定めておく必要があります。

かなり自由な働き方なんですね。コアタイムなくてもよいみたいですけど、ずきんはなかったら夜型とかになっちゃいそう。。

自由と言えども組織での仕事である関係上、取引先との関係や連絡もあるし、必要な時に人がいない!ってことにもなってしまうから、コアタイムを10時~15時までとしたりとか、ある程度制限を設けた方がよさそうよね。システム設計とかエンジニアに完全に仕事をお任せするような仕事だったら、自由にしてもよいかもですが。

フレックスタイム制を導入するために必要なこと

フレックスタイム制を新規に採用するには、

就業規則その他これに準ずるものにより、始業・終業時刻を労働者の決定に委ねることを定めること
✅労使協定で制度の基本的枠組みを定めること

なお、常時使用する労働者が10人以上の事業場は就業規則の作成・届出は必須となりますが、10人未満であれば届出は必須ではありません。
また、以下で言う「清算期間」が1か月を超える場合は、労使協定の所轄の労働基準監督署に届出ることが必要です。(清算期間が1か月以内は届出不要)
労使協定で定める事項は以下のものになります。(①~④は必須)
①対象労働者の範囲
清算期間(清算期間の上限は3か月、1か月単位の他、1週間単位等でも可能
清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
(清算期間を平均し1週間あたりの労働時間が40時間(※)を超えない以下の範囲で設定)
【清算期間を1か月とした場合の法定労働時間の総枠】

1か月の法定労働時間の総枠
清算期間の暦日数 31日 177.1時間
30日 171.4時間
29日 165.7時間
28日 160.0時間

清算期間に対する法定労働時間の総枠は以下の計算式で算出されます。
✅清算期間における法定労働時間の総枠=1週間の法定労働時間(40時間※)×清算期間の暦日数/7
(※労働者の使用を常時10⼈未満とする商業、映画・演劇業(映画製作事業を除く)、接客娯楽業、保健衛⽣業の特例措置対象事業所で清算期間が1か月以内の制度を採用する場合は、上記の計算式の40時間が44時間になります。)

ようは、清算期間が何週にあたるかをカウントしてそれに週の法定労働時間をかけるという考え方ですね。例えば清算期間を3か月とする場合、10~12月までを1単位とすると、この期間の総枠は40時間×(31+30+31)/7で525.7時間になりますね。この時間内で総労働時間を設定する必要があります。

④標準となる1日の労働時間(年次有給休暇を付与する場合はこの時間が基準となる。)
⑤コアタイム(任意)
⑥フレキシブルタイム(任意)

清算期間が3か月単位だとかなり自由な働き方ができそうですね。夏休みの8月はたくさん家族サービスするために、その前後で長く働いて調整してみるってのもありかも。なんかわくわくするなあ。

※就業規則や労使協定書の記載例など詳細は以下を参考にしてください。

【参考】フレックスタイム制の分かりやすい解説 導入の手引き

フレックスタイム制を導入した場合、法定時間外労働に関する取扱いはどうなるのか?深夜に働いたときは?

フレックスタイム制を導⼊した場合には、労働者が⽇々の労働時間を自ら決定することとなります。そのため、1⽇8時間・週40時間という法定労働時間を超えて労働しても、ただちに法定時間外労働とはなりません。逆に、1⽇の標準の労働時間に達しない時間もただちに欠勤となるわけではありません。
フレックスタイム制を導⼊した場合には、清算期間における実際の労働時間のうち、清算期間における法定労働時間の総枠(※)を超えた時間数が法定時間外労働となります。
この考えを前提とした上で、清算期間が1か月を超える場合は、繁忙月に偏った労働時間とすることはできないということで、1か月ごとの労働時間が週平均50時間を超えないことという決まりがありますのでご注意ください。

【基本】フレックスタイム制における法定時間外労働の確認方法
清算期間が1か月以内の場合
清算期間における実労働時間―清算期間における法定労働時間の総枠
清算期間が1か月を超え3か月以内の場合
まず、各月ごとに週平均50時間を超えた時間を法定時間外労働としてカウント

清算期間終了後に、清算期間における実労働時間から清算期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間を時間外労働としてカウントする。
(ただし、②で法定時間外労働としてカウントした時間を除く。)

今までの1か月や1年の変形労働時間制と比べても一番自由な感じがします。コアタイムもフレキシブルタイムもない完全フレックスだったら、1日何時間でも働いて次の日はほとんど働かずってのもありなんでしょうか。労働が深夜10時以降になったらどうなるんでしょう?

そうねえ、労働者が日々の労働時間を自ら決定するのだから、極端な話そういうのもありですね。ただし、深夜労働については、割増が発生してしまいます。それについては会社もフレキシブルといっても、労働者に対する健康管理義務もありますから、ある程度の通常の時間の幅の中で働いてもらうというのを予め決めておいたほうがいいですね。

なお、フレックスタイム制においても、法定時間外労働を少しでも⾏わせるためには、36協定の締結が必要ですので提出を忘れないでくださいね。

Q&A1:清算期間が1か月で労働時間に過不足がある場合はどう取り扱うのか?

先ほど、法定時間外労働について説明しましたが、法定時間外労働にはならないけど、予め定められた所定労働時間の総枠を超えて働く所定時間外労働や逆に所定労働時間に不足してしまう月なども存在すると思います。3か月単位とかであれば清算期間内のその次の月に繰り越してというやり方になりますが、清算期間が1か月だった場合、労働時間の過不足があった場合の取り扱いについての基本的考えを整理します。

清算期間が1か月単位のフレックスタイム制で労働時間に過不足があるときの賃金の取扱い
過剰:法定時間外労働、所定時間外労働含めその月の賃金での支払いが必要(法定時間外労働は1.25倍以上、所定時間外労働は1.00倍以上の支払い、繰り越しは不可)
不足:不足分の賃金をカットすることも可能、また不足時間を次の清算期間へ繰り越すことも可能

例えば、その月の所定労働時間が170時間だとして、実労働時間が150時間だったとすると、所定労働時間が20時間不足します。この場合、欠勤控除としてその月に賃金カットすることもできるし、不足分をその次の清算期間に繰り越すこともできます。ただし、繰り越した時間を含めて、次期の労働時間が法定労働時間の総枠の範囲内になることが必要です。

Q&A2:完全週休2日制を導入しているけど、月によっては、所定内労働時間が法定労働時間の総枠を超える場合はどうするのか?

土日が休日の事業所において、曜日によっては月で23日労働日がある場合、1日の所定労働時間が8時間だと、23×8で184時間が所定労働時間となり、フレックスタイム制で定められた法定労働時間の総枠(31日で177.1時間)を超えてしまうことになります。これについては、法改正があり、以下のように定められました。

完全週休2日制の事業場におけるフレックスタイム制の取扱い
・週の所定労働日数が5日(完全週休二日制)の労働者が対象
・労使が書面で協定(労使協定を締結)することによって、「清算期間内の所定労働日数×8時間」を法定労働時間の総枠とすることが可能

フレックスタイム制を導入するにあたっての実際の運用はどのようにすればよいのか?

自由な分、従業員への説明とルール作りをしっかりと!就業規則等の整備と労使協定の締結には抜かりなく。

フレックスタイム制を新規導入するにあたって先に述べた、就業規則等の整備と労使協定の締結及び届出(清算期間が1か月を超える場合)は必須ですが、形式を整えるというよりも、まずはこの働き方のルールについて、労使双方でしっかりと予め確認しておくことが重要です。労働者の裁量が強い働き方ですが、管理者の時間管理もあるので、コアタイムは原則として定め、フレキシブルタイムも出退社時間の上限下限を決めておかないと、深夜労働とかも自由にできてしまうことになりますので、注意しましょう。また、仮に時間外労働が発生するときに、どのように管理者に許可をとるのかについても、予めルールを定めておくことが望ましいです。

テレワークを前提としたフレックスタイム制の場合は、あわせてテレワーク時のルールを確認しましょう。

フレックスタイム制に一番親和性が高いのはテレワークでの勤務になるかと思います。出社の場合は、会社が開いている時間もありますので、フレックスタイム制と言っても、ある程度制限されたものになるでしょう。テレワーク勤務は基本在宅勤務になることが多いと思いますが、業務用PCの貸与や通信費や光熱費、出社するときの通勤手当などどのようになるのか、フレックスタイム制の制度説明とあわせて、しっかりと事前に確認しておかないとトラブルになる可能性があります。フレックスタイムと言っても、管理者側は従業員の業務の進捗状況については、随時レポートを求めるなど、見えない分しっかり管理しておくことが望ましいです。
【参考】テレワークの適切な導入および実施の推進のためのガイドラインパンフレット(厚生労働省)

実際の運用は勤怠管理システムを利用するのがベスト!ただし、システムによってはフレックスタイム制に対応していない場合があるので注意。

この自由なフレックスタイム制ですが、労働時間をきちんと管理できる自信はありますか?コアタイム、フレキシブルタイムがしっかりと定められていたらそれほどでもないかもしれませんが、労働者にとっても、使用者にとっても、フレキシブルタイムで今月あと何時間労働時間が足りていないとか確認したり、清算期間が3か月だったら、週平均50時間超えるのがどこであったりとか確認するのがそもそも大変なのではないかと思います。なので、そのあたりは労使双方が勤務状況をリアルタイムで確認できる勤怠管理システムを利用するのがベストだと思います。ただし、システムによっては、そもそもフレキシブルタイム制に対応していなかったり、対応していても1か月を超えるフレキシブルタイム制には対応していなかったりもするので、そのあたりは導入前にしっかり確認しておきましょう!

オフィスこころの所見

今日は変形労働時間制の最後ということで、フレックスタイム制に関して説明を行いました。ある程度自由が認められる分、逆に管理が難しくなるというのが特徴ですね。法定時間外労働や1か月単位での週平均50時間超えの確認や労働時間の不足の確認、繰り越し処理など、ひとりの労働者に対し、正確に労務管理するのは至難の業と言えそうです。その分、どういう時間管理になりそうかを予め想定して、コアタイム、フレキシブルタイムの時間帯の設定や、時間外労働に関するルール、テレワーク時の時間管理方法など予め労使でしっかり話し合いしておくことが何より重要かと思います。

労働者よりの制度とは思うけど、なかなか事業主さんにこれを正確に管理してくださいというのは酷です。フレックスタイム制の場合は勤怠管理システムの導入が必須と言えそうです。

そうですね。特に清算期間が3カ月単位のフレックスタイム制の場合は、時間の繰り越しとかもあるので、時間外がよく発生しそうな事業所だと手管理となると相当大変だと思います。システムに関しては、3カ月単位のフレックスタイム制をきちんと管理できるか、また勤怠管理だけでなく給与計算についても連動して間違いなく計算できるものか、予め確認できてから導入したほうが良さそうです。もし機会がありましたら、気まぐれ活動日記のほうでフレキシブルタイムを実際に勤怠管理システムで管理したらこんな感じというのをお知らせできればと思います。
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