みなさん、こんにちは🌟暑かった8月も過ぎ去り、食べ物がおいしい秋が楽しみですね🍇今日は、前回の老齢年金の基礎知識を踏まえて、年金の繰り下げについて、実際どうなのか解説していきたいと思います!
前回、老齢年金は原則65歳からって学んだけどそれを繰下げするってどういうこと?何か言葉が難しくて分からない。。
そうね、単純に言うと、年金の受け取り開始年齢を先延ばしにするんだけど、その代わりに、年金の金額が増えますよってことね。でも、色々注意しないといけないこと、知っておいたほうがよいことがあるから、そこを中心に解説するわね。
へ~。。年金が増えるんなら増えたほうがええけど、僕はまだまだ先だし(;'∀')でもおじいちゃんに教えて自慢したい!
Contents
老齢年金の繰下げの基本的仕組みについて
前回、老齢年金には国民全員に共通の老齢基礎年金と会社員期間等のある方のプラスアルファ部分の老齢厚生年金があるとお伝えしたかと思いますが、それぞれの基本的繰下げの仕組みは以下の通りです。
老齢基礎年金の繰下げ
原則65歳から支給される老齢基礎年金を66歳以後の希望する時点から最大70歳まで繰下げて受け取ることができます。繰下げて受ける場合、繰下げ一か月につき0.7%増額された年金額を生涯に渡って受けることになります。(ただし、障害年金や遺族年金を受け取っている方は、繰下げすることができません。なお、66歳以後にこれらの年金が受け取れるようになった場合は、その時点で繰下げ率が固定されます。)
【事例】65歳からの老齢基礎年金を満額受け取れる方が繰下げの申出を行った場合、見込み額はどのように変わる?
65歳時 780,900円(令和3年度の本来額)
66歳時 846,496円(本来額と比べて+8.4%)
67歳時 912,091円(本来額と比べて+16.8%)
68歳時 977,687円(本来額と比べて+25.2%)
69歳時 1,043,282円(本来額と比べて+33.6%)
70歳時 1,108,878円(本来額と比べて+42%)
老齢厚生年金の繰下げ
平成19年4月より、本来65歳から支給される老齢厚生年金を老齢基礎年金と同様に最大70歳まで繰下げて受け取ることができるようになりました。増額率も一か月につき0.7%と同じです。また、障害年金や遺族年金を受け取っている方は繰下げすることができないのも同じですが、障害基礎年金だけを受け取っている場合は老齢厚生年金の繰下げは可能です。66歳以後にこれらの年金が受け取れるようになった場合は、その時点で繰下げ率が固定されます。
【事例】65歳からの老齢厚生年金を1,000,000円受け取れる方が繰下げの申出を行った場合、見込み額はどのように変わる?
65歳時 1,000,000円(賞与込みの平均標準報酬額38万円で40年間で働いた方のおよその厚生年金見込み額)
66歳時 1,084,000円(本来額と比べて+8.4%)
67歳時 1,168,000円(本来額と比べて+16.8%)
68歳時 1,252,000円(本来額と比べて+25.2%)
69歳時 1,336,000円(本来額と比べて+33.6%)
70歳時 1,420,000円(本来額と比べて+42%)
繰下げについてざっと説明するとこんな感じです。ただ、ふと疑問に思った方も多いと思いますが、繰下げすればするほど、年金額は増えるけれども、受給開始も遅れますので、その間の年金は受け取りできないことになります。極端な話、70歳で繰下げして、年金を受け取り始めたけど、その後すぐお亡くなりになられた場合は、結果的には65歳から普通に受け取り開始したほうが良かったということにもなります。
繰下げした場合、「元が取れる」のは一体何年後になるの?(🐇さんが🐢さんに追いつくとき)
ここからは算数のお勉強です(^^;)例えば、上記の例のように、65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金あわせて1,780,900円の老齢年金を受け取れる人がいたとして、その方が70歳まで老齢基礎年金、老齢厚生年金を両方繰下げした場合、いわゆる「元が取れる」のは一体何歳のときでしょうか?ちなみに、ここでいう「元が取れる」とは、年金の総受給額が65歳から受け取り始めたときに比べて、繰下げしたほうが上回るかどうかということです。
年齢 | 本来総受給額
🐢さん |
繰下げ総受給額
🐇さん |
差額 |
65 | 1,780,900 | - | ▲1,780,900 |
66 | 3,561,800 | - | ▲3,561,800 |
67 | 5,342,700 | - | ▲5,342,700 |
68 | 7,123,600 | - | ▲7,123,600 |
69 | 8,904,500 | - | ▲8,904,500 |
70 | 10,685,400 | 2,528,878 | ▲8,156,522 |
71 | 12,466,300 | 5,057,756 | ▲7,408,544 |
72 | 14,247,200 | 7,586,634 | ▲6,660,566 |
73 | 16,028,100 | 10,115,512 | ▲5,912,588 |
74 | 17,809,000 | 12,644,390 | ▲5,164,610 |
75 | 19,589,900 | 15,173,268 | ▲4,416,632 |
76 | 21,370,800 | 17,702,146 | ▲3,668,654 |
77 | 23,151,700 | 20,231,024 | ▲2,920,676 |
78 | 24,932,600 | 22,759,902 | ▲2,172,698 |
79 | 26,713,500 | 25,288,780 | ▲1,424,720 |
80 | 28,494,400 | 27,817,658 | ▲676,742 |
81 | 30,275,300 | 30,346,536 | +71,236 |
82 | 32,056,200 | 32,875,414 | +819,214 |
83 | 33,837,100 | 35,404,292 | +1,567,192 |
84 | 35,618,000 | 37,933,170 | +2,315,170 |
機械だとあっという間に計算できるんですけどね(;'∀')自力で計算した場合の結果は、81歳のときに初めて総受給額が繰下げしたほうが上回るという結果になりました。つまり、約12年でやっと元が取れたということです。ただし、これは加給年金や在職老齢による支給停止部分がない方の場合を想定していますので、これらに該当する方はさらに元を取る年数がかかることになります。
余談ですが、これをもっとスマートに導き出すとどうなるでしょう?(参考までに)
繰下げ受給で「元が取れる」年数計算のイメージ図(オフィスこころ自作)
繰下げて元がとれるのはいつ参考までに現在の平均寿命や平均余命、さらには繰下げ選択率の参考値を紹介!
日本人の「平均寿命」は男性が81.64歳、女性が87.74歳となっています。さらに65歳まで生きた人があと何年平均的に生きるかを表す「平均余命」は男性が20.05歳(85.05歳まで生きる)、女性が24.91歳(89.91歳まで生きる)となっています(令和2年度簡易生命表による)。あくまで個人差があるので参考までに(^^;)
例えば男性は70歳まで繰下げしたとしても、元が取れるのが82歳やったら、平均して約85歳まで生きられるとして残り約3年はメリットがあるということになるな。う~ん、とても微妙。。
正直な感想ね(;^_^ 結果的に長生きすればするほどお得だったということにはなるわね。でも、いつ何があるか分からないし、ほとんどの人が本来の65歳から受け取っています。実際に繰下げを選択している人は老齢基礎年金で1.5%、老齢厚生年金で0.8%くらいだそうです(令和元年度厚生年金保険・国民年金事業年報より)。
繰下げ検討中の方必見!年金を繰下げするのに注意が必要な人
1.加給年金や振替加算がついている人→加給年金は老齢厚生年金、振替加算は老齢基礎年金の繰下げに注意!
前回の「お役立ちミニ講座Vol.4」でも少しお話しました、主に厚生年金加入期間が20年未満の年下の配偶者等がいて、「加給年金(令和3年度390,500円)」がつく方に関しては、老齢厚生年金を繰下げてしまうと、加給年金はその間受け取れなくなってしまいます。また、繰下げしたとしても、加給年金額は増額されませんので、繰下げのメリットは薄いと思われます。
逆に、加給年金対象の配偶者が65歳になったときに、配偶者自身の老齢基礎年金に加算される「振替加算(昭和41年4月1日生まれまでの方が対象)」についても、老齢基礎年金を繰下げすると、その間受け取れなくなりますし、加給年金と同様、繰下げしても増額はありません。ただし、こちらは金額的には加給年金よりは少ないので生年月日によってはそれほど大きな影響でない場合もあります。
例えば、夫婦で加給年金のついている夫のほうは老齢基礎年金のみを繰下げ、振替加算のつく妻は老齢厚生年金のみを繰下げするっているパターンもあります💰かなり財テク上手な夫婦ですね(;'∀')
2.在職していて、老齢厚生年金の一部か全額がとまっている人→繰下げしても在職中で支給停止になっている額は増額されません!
老齢厚生年金を受け取っている方のうち、在職している方は、その報酬の額によって経過的加算額(※1)を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の一部または全額が止まる場合がありますが、そのような方が繰下げを申出された場合、増額の対象になるのは、支給停止されなかった老齢厚生年金(報酬比例部分)の額と経過的加算額のみになりますので、停止額が多ければ多いほど、増額対象額は少なくなりますので、繰下げのメリットは薄いと思われます。
会社役員さんなどで65歳以降も報酬が高く、老齢厚生年金(報酬比例部分)の一部または全額が支給停止になる方は、老齢基礎年金だけ繰下げするという手もありですね。特に加給年金がつく方は、全額が支給停止になると加給年金も止まるので、支給停止にならないか一部支給停止くらいになるように役員報酬を調整して老齢厚生年金は加給年金付きで65歳から受け取り開始になるようにする方もいらっしゃいます(;'∀')
【参考】
その他、繰下げに関する素朴な疑問を解決!!
繰下げしたいときはどうすればいいの?
60歳代前半に特別支給の老齢厚生年金を受け取っている方
→65歳になる誕生月の初め頃(1日生まれの方は前月の初め頃)に日本年金機構からハガキ状の「年金請求書」が送られますので、老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに繰下げ希望の方は返信を保留にしてください。(本来の65歳から支給希望の方は誕生月末日までに返信してください。)
なお、一方だけ繰下げしたい方は、繰下げ希望の欄に、繰下げ希望する方の年金をマルで囲んで返信してください。マルをつけていないほうの年金は65歳からの支給となります。その後、正式に繰下げを希望する場合は、66歳のお誕生日の前日以降で自分が希望するときに、年金請求の手続きを行ってください(※2)。
65歳で初めて年金の受け取りが始まる方(厚生年金の加入期間が1年未満の方または男性S36.4.2以降、女性S41.4.2以降生まれの方など)
65歳になる誕生月の約3か月前に日本年金機構から封筒に入った年金請求書及び年金の請求手続きのご案内が届きます。通常は65歳のお誕生日の前日以降に、添付書類等を揃えて年金請求書を提出しますが、老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに繰下げを希望する場合は、請求書の提出を保留してください。ただし、一方だけ繰下げを希望する場合は年金請求書を提出していただくときに、繰下げの意思確認を行うことになります。その後、正式に繰下げを希望する場合は、66歳のお誕生日の前日以降で自分が希望するときに、年金請求の手続きを行ってください(※2)。
(※2)もし、繰下げの手続きを忘れていて70歳を過ぎて繰下げ希望を申し出た場合は、70歳到達時に申出があったものとみなし、70歳到達月の翌月分から繰下げて増額した年金の受け取りが可能になっています(平成26年4月より)。
繰下げ待機中にもし本人が亡くなったらどうなるの?
では、65歳からの年金を繰下げ待機中の方が、繰下げ申出をする前に亡くなったらどうなるのでしょうか?繰下げはあくまで本人の意思によるものなので、遺族の方がその意思を継ぐことはできません(そもそも年金は本人の生存中にのみ受け取りができるもので、亡くなった場合には繰り下げはあり得ません)。ただし、その場合は年金が未請求であったことになるので、本来額の年金はご遺族の方が請求により未支給年金として受け取ることが可能です。ただし、老齢年金の請求時効は「5年」ですので、5年より前の年金は時効となり受け取ることはできません。
迷ったときはどうすればよいか?老齢年金の請求時効は5年、そのうちに考えて!
「繰下げするべきか、しないべきか…」少しでも希望がある方は大きく迷われると思います。65歳以上でも働いていて当面の生活に支障がない場合はとりあえず保留しておくのもありです。老齢年金の請求時効は「5年」ですので、保留にしておいても5年以内ならば、年金が消えてなくなることはありません。例えば、68歳になるまでとりあえず保留にしておいたけど、やっぱり繰下げはしないでおこうと考え直した場合は、65歳に遡って本来額の年金を受け取りすることもできます。その場合は、過去の年金については、一括で支払われ、今後の年金については、本来額の年金を生涯受け取ることになります。また、繰下げしようと思った場合は、その時に請求手続きをすれば68歳からは増額した年金を生涯受け取ることができるようになります。
年金を使わず貯金しておいたと思えばええんかな。。一括で受け取れるのもそれはそれでありがたいと思うことがあるかもしれん。
令和4年度から法改正で年金の繰下げが75歳まで可能にΣ(・□・;)
令和4年度に年金制度の大きな改正があり、その中のひとつに、年金の繰下げが最大75歳まで可能になるというのがあります。増額率は一か月につき0.7%と変わらないため、もし75歳まで繰下げしたとすると、0.7%×120月(65歳から75歳までの月数)=84%の増額率になります。ただし、同様に75歳まで年金は受け取りできないので、さらに長生きしないとなかなか元を取ることはできません(75歳から受け取り開始した場合に一般的に「元が取れる」年齢は86歳となります、計算式は70歳までの繰下げの場合と同じです)。ちなみに、この法改正の対象になるのは、令和4年4月1日時点で70歳未満である昭和27年4月2日以降に生まれた方で、まだ65歳からの老齢年金を請求されていない方になります。
増額率は凄いけど、これを選ぶ人ってなかなかのチャレンジャーやと思うな(;'∀')
オフィスこころの所見
ここまで、年金の繰下げについて解説しましたがいかがでしたか?とりあえず、その年齢にならなければ、想像しにくいものですが、こういう年金の仕組みがあるということだけでもご理解いただければと思います。
やはり、年金は長生きすればするほど受け取り額が多くなるので、「得」とも言えますが、先のことは誰にも分かりません。そのときどきの自分の判断で決めることなので、ご希望の方は一度年金事務所等でご相談いただいて、メリット、デメリットをよく理解したうえで、自分の選択をしていきましょう。逆に自分で判断できる自信がない方は、本来通りの65歳請求が一番無難だと思いますね(^^ゞ
今日のこと、忘れないうちにおじいちゃんに教えてあげよ('◇')ゞお小遣いもらえるかな💛
fa-coffee最後までお読みいただきありがとうございました。オフィスこころでは、今後も身近な生活の中で、「こんなときどうしたらいいの?」という疑問に対する解決方法を少しずつ情報提供していきたいと思っています。少しでも誰かのお役に立てますように