【お役立ちミニ講座Vol.4】年金の繰下げってどうなの?その前に「老齢年金」の基礎知識について解説
こんにちは!暑さとコロナは早く立ち去って欲しい毎日ですね。ところで、今日は私の知人の今年65歳になった女性の元に、年金機構から老齢年金を請求するためのハガキが来たけど、年金の繰下げってしたほうがいいの?というご相談がありました。ということで、二回に分けて、老齢年金の基礎知識(※1)と年金の繰下げってどういう仕組みなのかを中心にできる限り分かりやすくお伝えしていきたいと思います!
(※1)主に国民年金と厚生年金保険のみの加入者が公的年金の老齢年金を受け取ることを前提にご説明します。

知ってて損はない「老齢年金」の基礎知識を解説

「老齢年金」はどういう人が受け取れる?

公的年金の三本柱「老齢年金」、「遺族年金」、「障害年金」のうち、原則65歳になったら受給できる年金が「老齢年金」になります。遺族年金や障害年金はその特有の事由が起こらないと受給することはありませんが、老齢年金はほとんどの方が65歳になれば受給できる年金になります。

ほとんどの人って年金を受け取れない人もおるん?

老齢年金を受け取るには受給資格期間っていうのがあって、原則保険料納付済期間(国民年金に加入して保険料を納めた期間か厚生年金保険に加入していた期間、保険料は納めていないが厚生年金加入者の被扶養配偶者だった期間)や保険料免除期間等(国民年金に加入してたが、所得によって保険料が全額免除または一部免除になっていてその保険料を納めた期間、他に学生納付特例や納付猶予の承認を受けていた期間等)をあわせて「10年」以上あることが必要になるわよ。平成29年7月まではこれが「25年」だったから、今は大分短縮されてるわね。

 

ぼくは20歳から22歳までは国民年金の学生納付特例が承認されていて、それ以降は厚生年金保険に加入してるからとりあえずは大丈夫やな。

60歳になるときに、10年の受給資格期間に満たない人には、注意喚起としてハガキ状のお知らせが届くようになっているわよ。例えば、国民年金には60歳以降も任意加入して保険料を納めることができる制度があるけど、その他にも海外在住期間など年金に加入する義務がなかった期間等を年金の受給資格期間に算入できる場合があるので、そのときになったら年金事務所に相談をおススメするわ。

「老齢年金」は原則65歳から受給開始

老齢年金は「老齢基礎年金」(1階)「老齢厚生年金」(2階)の二本立てで、原則65歳から支給されます。
「老齢基礎年金」→20歳から60歳までの国民年金保険料納付済期間または厚生年金被保険者期間と全額免除期間(または一部免除の納付済み期間)もしくは20歳から60歳までに厚生年金保険の被保険者の被扶養配偶者(多くは会社員の夫の扶養に入っている妻)であった期間に応じて支給される。
「老齢厚生年金」→厚生年金保険に加入していた期間の報酬月額や賞与の平均額と加入期間に応じて計算され、支給される。

国民年金のみで受給資格期間を満たした人は「老齢基礎年金」、国民年金と厚生年金保険の両方の被保険者期間があって、受給資格期間を満たした人は「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」が受け取れることになります。

今年75歳になったぼくのおばあちゃんは、若いころお勤めしてたみたいやけど、もっと早くから年金受け取っていたような。。

老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていて、厚生年金保険の被保険者期間が1年以上ある昭和16年4月1日以前に生まれた男性、昭和21年4月1日以前に生まれた女性が「老齢厚生年金」を受給開始できる年齢は以前は60歳からだったのよ。この場合、定額部分といって、働いていた期間の老齢基礎年金に相当する額もあわせて60歳から支給されていたから、きっとそのことね。

 

それが昭和60年に老齢厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたのだけど、当面の間は世代間で不公平が生じないよう、「特別支給の老齢厚生年金」と言って、一定の条件(※2)を満たせば、段階的に生年月日に応じて60歳から65歳までの間に、勤めた期間の報酬に応じた年金を受け取れるようになっているわよ。

(※2)①老齢基礎年金を受け取るために必要な資格期間を満たしていること。②厚生年金保険の被保険者期間が1年以上あること。③受給開始年齢に達していること。

詳しく知りたいかたはこちらから→特別支給の老齢厚生年金(日本年金機構HP)
ちなみに、昭和36年4月2日生まれ以降の男性、昭和41年4月2日生まれ以降の女性の受給開始年齢は原則どおり65歳からになります。

「老齢年金」の金額は?→本人の年金加入状況や保険料納付状況などによりひとりひとり異なります!

【目安1】老齢基礎年金(1階)の額
老齢基礎年金の満額(40年間全額納付済)は780,900円/年(令和3年度)…①
国民年金の免除や猶予、未納期間のある人はこれから減額になります。20歳から60歳までの厚生年金被保険者期間は同時に国民年金全額納付済み期間となりますので、両方の期間がある人は、20歳から60歳までの国民年金の納付済み期間や全額免除、一部免除の納付済み期間と厚生年金の被保険者期間をあわせた期間が老齢基礎年金の計算の元になる期間になります。
【目安2】老齢厚生年金(2階)の額
20歳から60歳まで平均標準報酬額(賞与を含む月収の平均)30万円で厚生年金保険に40年間加入した人の老齢厚生年金の概算は789,264円/年…②(※3)
(※3)計算を簡易にするため、報酬と賞与を含む総報酬制が導入された平成15年4月以降の計算式で計算しています。
上記の方は同時に、国民年金にも40年間加入して納付済みということになるので、老齢基礎年金も満額受け取り出来ます。つまり、上記の①と②を合わせた1,570,164円/年が65歳からの年金見込み額ということになります。
この他、例えば昭和21年4月2日以降生まれで、厚生年金保険加入期間が40年に満たず、20歳前や60歳以降に厚生年金保険の被保険者期間がある人は、その期間に応じた基礎年金の額に相当する差額が老齢厚生年金に加算されます。また老齢厚生年金は厚生年金保険加入(最大70歳まで)の全期間について、計算されますので、その分年金額は増えることになります。

年金額は本当に一人一人違いますね。ご自分の年金見込み額を手っ取り早く確認したい人は、ねんきん定期便やねんきんネットが役に立ちますね。前回の「お役立ちミニ講座Vol.3」をぜひ参照してください!50歳以上の方なら、年金事務所や街角の年金相談センターでも試算できますよ。

僕もあれから、ねんきんネットに繋げて試算してみたよ。結構便利だね。みんなにも勧めてみるよ!
■老齢年金の計算式を詳しくお知りになりたい方は以下をご参照ください。

「老齢年金」には加給年金という名の家族手当がある(配偶者がいる場合、年間約39万円加算されるが一定の条件あり)

厚生年金の被保険者期間が20年以上ある人に生計維持している65歳未満の配偶者(※4)や18歳未満のお子様(または20歳未満の障害のあるお子様)がいる場合は、老齢厚生年金(または特別支給の老齢厚生年金の定額部分)がでるタイミング(通常は65歳)で「加給年金」という名の家族手当がつきます。ちなみに加給年金対象の配偶者がいる場合の現在の参考年額は+390,500円です。
(※4)恒常的な年収が850万円未満であることが条件。また、配偶者自身が厚生年金の被保険者期間が20年以上ある年金を受けられる場合または障害年金を受けられる場合は支給停止になります。

例えば、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人が65歳で老齢厚生年金を受け取れるようになったときに条件を満たす配偶者が60歳(同じ誕生月)だとすると、配偶者が65歳になるまで5年間、1年で約39万円だから、5年間で約195万円が加算されるってことね!

なるほど、それは結構大きな額だな。。配偶者の年齢が下に離れれば離れるほど累計加算額が大きくなるってことだな。

鋭いわね、そのとおり。配偶者が年上の場合は原則加給年金がつかない(例外はありますが、細かいので省略します)のはちょっと不公平な気もするわね💦ちなみに、加給年金の対象となる配偶者が65歳になった場合、加給年金はなくなりますが、その代わり、配偶者自身の老齢基礎年金に「振替加算」が、生年月日に応じた定額で加算されます。ただし、振替加算は昭和41年4月1日以前生まれの配偶者の方のみが対象で、若いほど金額が少なくなります。

先ほどの年上の配偶者がいる場合のせめてもの救いだけど、本人が老齢厚生年金を受け取ることが出来るようになった時点(原則65歳)で、条件を満たしていたら、65歳以上の配偶者自身の老齢基礎年金に直接、振替加算が加算されるようになっています!
加給年金と振替加算について詳しくはこちらから→加給年金と振替加算(日本年金機構HP)

オフィスこころの所見

老齢年金の受給資格期間は10年に短縮されましたが、納めた期間が短い人の年金額は、それに応じて少なくなりますし、遺族年金や障害年金を受給できる要件にも影響があるので、納めることが難しくても手続きしておくことは重要ですよ。
以上、老齢年金の原則的取り扱いについてざっくりとご説明しましたが、何となくイメージできますでしょうか?ご自分の場合はどうなのかということを考えて見ると分かりやすいかもですね。細かい部分を見ていくとひとりひとり違うので、気になる方は年金事務所や専門家にご相談ください🌟次回は、これを踏まえて、65歳からの老齢年金の金額を増額することができる「繰下げ制度」について、説明出来ればと思います。それでは、皆様ごきげんよう。

最後までお読みいただきありがとうございました。オフィスこころでは、今後も身近な生活の中で、「こんなときどうしたらいいの?」という疑問に対する解決方法を少しずつ情報提供していきたいと思っています。少しでも誰かのお役に立てますように

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