Contents
- 1 健康保険と厚生年金保険は原則セットで加入が必要!「週30時間以上」の勤務かどうかが加入の目安に
- 2 それぞれの保険(国、地方、私学共済以外)について個別に紹介!
- 3 社会保険に初めて加入する事業所が手続きする書類はどんなもの?
- 4 オフィスこころの所見
健康保険と厚生年金保険は原則セットで加入が必要!「週30時間以上」の勤務かどうかが加入の目安に
社会保険(※1)っていったい何?→社会保険は「健康保険」と「厚生年金保険」から成り立ちます。
(※1)社会保険とは広義に解釈すると労働保険も含めますが、この投稿では狭義に解釈し、社会保険を「健康保険」と「厚生年金保険」から成り立つものとして解説します。
まずは共通事項 どんな事業所、どんな人が加入対象になるのか?
【共通事項その1:適用事業所とは】
①すべての法人事業所(業種や従業員規模によらない)
②常時従業員を5人以上使用している個人事業所(ただし、非適用業種と言って、例えば接客娯楽業(旅館、飲食店等)、法務業(弁護士、税理士等)、宗教業(寺院、神社等)、サービス業(飲食店・理美容店)等の事業所は除かれます。)
5人未満の個人事業所や強制加入対象の事業所にはならない個人事業所でも、従業員の半数以上が厚生年金保険等の適用事業所となることに同意し、事業主が申請すれば厚生労働大臣の認可を受けて任意加入をすることができます(任意適用事業所)。なお、令和4年10月より非適用業種のうち法務の事業所については、5人以上で強制適用事業所となることが決まっています。
【共通事項その2:被保険者とは】
健康保険・厚生年金保険では日本国内の事業所単位で適用事業所となり、その事業に使用され「一定の条件」を満たす人はすべて被保険者となります。法人の代表者など、労働保険の対象にならない方も、社会保険では法人に使用されるものとして強制加入の対象となります。なお、個人事業所の事業主及びその同居の家族などは対象外になります。
一定の条件とは?
①正社員や法人の代表者、役員等
②パートタイマー・アルバイト等でも、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上である方
(ただし、2か月以内の期間を定めてその期間のみ雇用される人等は対象外)
また上記の条件を満たす場合は、外国籍の方であっても、試用期間中の方であっても雇用された日より適用となります。
現在は従業員数(※2)が501人以上の大規模事業所や国、地方自治体に勤める方は、正社員の4分の3未満であっても、週の所定労働時間が20時間以上など一定の条件を満たす場合は被保険者になります。またこの適用拡大については、令和4年10月に従業員数100人以上、令和6年10月に従業員数50人以上の事業所が対象になるとされています。
(※2)従業員数とは現在の厚生年金保険の加入者数で判断されます。
【参考】社会保険適用拡大ガイドブック
それぞれの保険(国、地方、私学共済以外)について個別に紹介!
健康保険…適用の窓口は原則事業所管轄の年金事務所、給付の窓口は各都道府県にひとつずつ存在する全国健康保険協会(通称:協会けんぽ)
【例外】船員さんが加入する船員保険の場合の給付の窓口は、東京にある全国健康保険協会の船員保険部が全国で唯一の窓口となります。ただし、健康保険組合を単独で設立している事業所、同種の事業体で共同設立している健康保険組合に加入している事業所はその組合が窓口となります。また、例えば法人設立前に各従業員が建設国保等に加入していた事業所が、法人設立時に社会保険の強制適用事業所となったときは、承認を受けたうえで健康保険が適用除外となり、引き続き建設国保に加入することができます。また、その事業所に新しく採用された人も一定の条件を満たせば、承認を受けて建設国保に加入することができます。このような同業種により設立された国民健康保険組合は、建設国保の他にも医師国保、薬剤師国保等があります。
また、医療給付が充実している他、保険料負担についても前年の所得で保険料が決まる国民健康保険と違って、事業主と折半という形をとっており、また被扶養者に対する保険料は発生しないなど、相対的に割安となっています。なお、健康保険料率は、協会けんぽの場合は全国の各支部の財政状況によって保険料率が異なっています。また、40歳以上65歳未満の従業員には介護保険料が健康保険料に別途加算されます。
🌼健康保険の素朴なギモン Q&A
Q.健康保険の被扶養者になる条件は?→税法上の扶養とは認識が異なる(税法上の扶養になれなくても、健康保険の扶養に入れる人はいる)
Q.健康保険の被扶養者になった配偶者の年金はどうなる?
Q.健康保険の加入対象は?何歳まで加入する?保険料はどのように決まる?保険料は被扶養者についてもかかるの?
厚生年金保険…窓口は事業所管轄の年金事務所
厚生年金保険は、被保険者が高齢になったとき、障害になったとき、亡くなった時に、請求していただくことにより、年金や一時金の支給を行う制度です。
🌼厚生年金保険の素朴なギモン Q&A
Q厚生年金の保険料率は今18.3%だけど、年々あがっていくの?
Q厚生年金保険は何歳までかけるの?
【参考】従業員が70歳になったとき
社会保険に入るとどれくらいの経費がかかるのか?気になる事業主さんに目安を紹介!
賞与も含めて報酬の約30%が社会保険料です。その半分(約15%)を事業主が負担し、残り半分は従業員の給与より天引きします。
<例えば毎月の総支給額が30万円の40歳従業員の場合 R3年12月時点の香川県料率で試算>
料率 | 事業主負担分 | 本人負担分 | 合計 | |
健康保険料(介護保険料込) | 12.08% | 18,120円 | 18,120円 | 36,240円 |
厚生年金保険料 | 18.30% | 27,450円 | 27,450円 | 54,900円 |
子ども・子育て拠出金 | 0.36% | 1,080円 | なし | 1,080円 |
ここで保険料率をすべて足すと30.74%(うち事業主負担分15.55%)
また40歳未満または65歳以上(70歳未満)の従業員を雇う場合は、介護保険料がないため28.94%(うち事業主負担分14.65%)となります。
なお、賞与を支給した場合は、賞与の総支給額に1,000円未満の端数があれば切り捨てし、その額に対して同料率の健康保険料、厚生年金保険料、子ども・子育て拠出金が発生しますので、こちらも経費の計算の中に含めてください。
労働保険とあわせると事業主負担は何パーセント?→労働保険料含めると、一般小売業で報酬の約16%の事業主負担がかかると思ってください。
労働保険とあわせて考える場合、労働保険は業種により料率が異なりますが、仮に一般の小売業として事業主負担分は労災保険料0.3%、雇用保険料0.6%なので全部あわせると、事業主負担は40歳以上65歳未満の人で16.45%、40歳未満または65歳以上(70歳未満)であれば15.55%ということになります。
社会保険料の計算の元になる報酬はどのように決まり、どのように徴収されるのか?(概略)
社会保険料は労働保険料と違って毎月発生します。例えば令和3年12月分の保険料は翌月末の令和4年1月末が納付期限となります。従業員の給与から控除する場合は、翌月の1月支払いの給与から天引し、預かった保険料と事業主負担分の保険料及び子ども・子育て拠出金をあわせて、その月(1月)の末日に納めることになります。また、標準報酬月額がどのように決められるかについては、資格取得時に基本給、諸手当、残業見込み等を含めた総支給額で届け出を行い決定された以降は、基本7月10日までに提出する年1回の算定基礎届において、4~6月までの総支給の平均額でその年の9月分からの標準報酬月額を改定することになります。この他、基本給の変更等、固定給や給与体系に変更があり、変更後初めての支給月から3か月の総支給額の平均が従前の標準報酬月額より2等級以上変動がある場合は、変更後初めての支給月から数えて4か月目の1日を改定日として標準報酬月額が改定される仕組みとなります。
なお、厚生年金保険料率はH29年以降変更ありませんが、各都道府県の協会けんぽの収支の状況等により、健康保険料率は毎年3月に改定されることが多いです。その場合、3月分の保険料から保険料率が改定になるので、標準報酬月額は変わらなくても翌月の4月支払いの給与から控除額が変更になりますので注意が必要ですね。
社会保険に初めて加入する事業所が手続きする書類はどんなもの?
まず、適用対象かどうか確認した上で、適用対象であれば以下の書類を持参して、原則管轄の年金事務所の窓口で手続きすることになります(電子申請等も出来ますが、最初の加入手続きは管轄年金事務所の窓口で行うほうが賢明です。)
【法人事業所の場合】
①健康保険厚生年金保険 新規適用届+法人(商業)登記簿謄本(事業所の所在地が異なる場合は別途、賃貸借契約書のコピー等)+法人番号指定通知書のコピー
②健康保険厚生年金保険 被保険者資格取得届
③健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)
④健康保険厚生年金保険 保険料口座振替納付申出書
【個人事業所(強制適用)の場合】
①健康保険厚生年金保険 新規適用届+個人事業主世帯全員の住民票(事業所の所在地が異なる場合は別途、賃貸借契約書のコピー等)
②~④は強制適用事業所と同じ
【任意適用事業所の場合】
①個人事業所(強制適用)の場合の①+任意適用申請書および任意適用同意書+事業主の5種類(所得税、事業税、市町村民税、国民年金保険料、国民健康保険料)の公租公課の領収書(原則1年分)
②~④は強制適用事業所の場合と同じ
なお、強制適用の場合は原則、新規適用届の受付日もしくはその月の1日に加入となりますが、任意適用の場合は、受付後に審査を経て、厚生労働大臣の認可があった日に加入となりますので、受付から認可まで約1週間ほど見込んでおいてください。
【参考】事業主の皆様へ 厚生年金保険・健康保険制度のご案内(日本年金機構作成リーフレット)
オフィスこころの所見
fa-coffee最後までお読みいただきありがとうございました。オフィスこころでは、今後も身近な生活の中で、「こんなときどうしたらいいの?」という疑問に対する解決方法を少しずつ情報提供していきたいと思っています。少しでも誰かのお役に立てますように