【お役立ちミニ講座vol.11】女性の産前産後~育児に関わる労働保険/社会保険の各種手続きについてマスターしよう!(産前産後休業編)

みなさんこんにちは🌟もうすぐ4月で新しい環境になる人も多いでしょうか?今回からのお役立ちミニ講座は、働く女性に焦点を当てて、出産育児にまつわる労働保険社会保険の各種手続きについて、体系的にまとめてみようと思います。今回はいつもの「かえるちゃん」じゃなく、新キャラ「ずきんちゃん」が登場です。

はじめまして、ずきんと申します(^^ゞ私は今、中小企業で働いていて、ジューンブライドの6月に結婚の予定です💝今後、もし子供が出来たら、一時仕事を休まなくてはいけなくなるけど、そのときどんな手当があるのか予め知っておきたいなあと思っています。

それはおめでとうございます‼👰お勤めの場合は、社会保険などから出産から育児までトータルで手厚いサポートがあるので、安心してくださいね🍀色々と制度は複雑なのですが、トータルで概要が掴めるように、まずは産前産後の期間までの手当等についてお話しますね。

先に結婚した友だちから色々聞くんだけど、正直よく分からなくて(;'∀')ぜひ、この機会に知っておきたいです‼

Contents

まずこれを理解していないと始まらない🌼産前産後休業の期間は「労働基準法」ではどのような取り扱いになっているの?

労働基準法で、使用者が守るべきこととして定められている3つのこと

・六週間以内(多胎妊娠にあたっては十四週間以内)に出産を予定している女性が休業を請求した場合には就業させてはならない
産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない
産後六週間を経過した女性が請求した場合において、医師が支障がないと認めた業務に就かせることは可能。

以上を纏めると産前産後休業のイメージは以下のとおりです👇
なお、補足として出産予定日より出産日がずれた場合の、産前産後休業の取扱いについてあわせて説明します。

労働基準法による産前産後休業取得イメージ

なお、ここで言う「出産」とは、妊娠85日(4か月)以後の分娩をいい、正常分娩に限らず、早産、死産、流産、人工妊娠中絶も含みますこの出産の考え方は以下の社会保険でも同様です。

社会保険で産前産後休業期間中に受けられるメリット3つ🍀

労働基準法での基本の取り扱いは上記のようになりますが、以上を踏まえまして、社会保険(ここでは健康保険及び厚生年金保険)での取り扱いを見て行きましょう。なお、健康保険の保険者は全国健康保険協会か健保組合になりますが、ここでは中小企業を対象とした全国健康保険協会(通称協会けんぽ)の取扱いを前提に説明します。

①【保険料免除】産前産後休業期間中の社会保険料(健康保険料及び厚生年金保険料)は全額免除に!

産前産後休業期間中は、通常女性労働者へ給与がでない期間になります。そのため、社会保険料の支払いが厳しくなることを踏まえて、仕事を休んで働いていない場合は、事業主からの申出により、社会保険料は、「産前産後休業開始年月日の属する月分から産前産後休業終了年月日の翌日が属する月の前月分まで事業主、本人負担分ともに免除」になります。保険料は免除になりますが、標準報酬月額は変わらないので健康保険の給付も、将来の年金の給付も保険料が免除になったことによる影響はありません。

■例1:5月30日から9月4日まで産休を取った場合→5月分~8月分まで免除

5月分 6月分 7月分 8月分 9月分

■例2:6月25日から9月30日まで産休を取った場合→6月分から9月分まで免除

5月分 6月分 7月分 8月分 9月分
【盲点】保険料が免除になるかどうかは「月の末日が産前産後休業日になっているかどうか」で判断されます('◇')ゞ
届出方法は出産予定日より前に提出するか、出産後に提出するかで少し手間暇が異なる(;'∀')

提出書類:健康保険厚生年金保険 産前産後休業取得者/変更(終了)届
提出期間:産前産後休業期間中
提出者:被保険者が産前産後休業の取得について事業主へ申出を行い、申出を受けた事業主が提出する

1.出産予定日より前に提出する場合

まず、予定日を基準として産前6週、産後8週間で予め提出(単胎妊娠の場合)

→【予定日どおりに出産】1回の提出で終了する。

→【予定日より前に出産】予定日前に1回目の提出をしたあと、実際の出産日を基準に産前、産後期間を再度確認し、変更届を提出する。なお、産前休業が前倒しになる期間については、女性被保険者がその時、労務に服していなければ(=働いていなければ)健康保険法/厚生年金保険法上は産前期間として認めている。全期間、労務に服しておらず、すべて前倒しになったとしても、産後期間は実際の出産日の翌日から起算するので、トータルの期間は変わらないことになる。(以下の会話を参照してください(^^ゞ))

出産日が予定日より前になったら、当初の産前休業期間よりも前倒しになるけど、この期間も産前休業期間になるのですか?そのとき働いていたらどうなるの?

ずきんちゃん、鋭いわね🌟これはね、健康保険法と厚生年金法で規定する産前産後休業というのが、「女性被保険者が妊娠または出産を事由に労務に服していない状態」ということだけ定められているので、労働基準法上の取扱いと厳密にいえば異なっているの(-_-;)なので、前倒しになった期間については、産前休業でなくても、例えば普通の有給、公休、欠勤、休職等を問わず、労務に服してさえいなければ、健康保険と厚生年金保険の保険料免除は認められることになってるの。また、お給料が出ているか出ていないかは関係ありませんが、もし、働いていたら健康保険法/厚生年金保険法上の産前休業期間とは認められないことになります。

へえ~何か不思議だけど、それで月を跨いだら1月免除が前にずれるってこともあり得るかもしれないってことね。でも保険料が免除になるならそれでいいわ🍀「労務に服している=働いている」かどうかがポイントということが分かりました!

→【予定日より後に出産】予定日前に1回目の提出をしたあと、実際の出産日を基準に産前、産後休業期間を再度確認し、変更届を提出する。この場合、予定日の翌日から実際の出産日までの期間が産前休業に追加されるため、トータルの期間が伸びる。

出産予定日より前に提出することのメリットとしては、いち早く保険料免除を受けることができることですね。デメリットとしては、出産日が予定日より変更になった場合は、再度変更の届が必要になることですね。

2.出産予定日より後に提出する場合

こちらは、出産日で産前、産後期間が確定するため、提出が一度で済みますね。デメリットとしては、遅れて提出することになるので、リアルタイムで保険料の免除が受けられず、後日遡及しての免除になることですね。

なお、この届出は産前産後期間中に提出することが原則必須となります。もし、事業主の庇護で届出が遅れた場合は、「遅延理由書、出勤簿、賃金台帳」等の添付書類の提出を求められるのと、免除期間の遡及については受付日より遡って2年間に限られますので注意しましょう!

以上、健康保険法/厚生年金保険法における産前産後休業期間の捉え方について、分かりやすく図表にまとめてみましたので、ご参照ください(^^ゞ

健保・厚年法における産前産後休業の捉え方
🌼「産前産後休業」の素朴なギモン Q&A
Q1.女性事業主や役員の被保険者は労働者ではなく、使用者側だけど保険料は免除になるの?
A1:労働基準法上における産前産後休業の対象者は労働者ですので、使用者側を対象としていません。ただし、健康保険法/厚生年金法の規定では、「出産予定日が明らかである女性被保険者が、出産(予定)の日以前42日(多胎の場合は98日)から出産の日後56日までの間で適用事業所にて労務に服さない期間」と整理されていることから、役員であっても、その期間労務に服していなければ、保険料免除の対象になります。
Q2.社会保険に加入している女性はいいけど、自営業者の国民年金保険料は免除されないの?
A2:以前は産前産後休業の保険料免除は社会保険に加入している女性のみでしたが、平成31年4月より自営業者等が加入する国民年金についても同様の制度が創設されました。被保険者からの届出により、出産予定日または出産日が属する月の前月から4カ月間の国民年金保険料が免除されます。参考リーフレット

②【出産育児一時金】健康保険から、女性被保険者及び被扶養者の出産にかかる費用をサポート

妊娠4ヵ月(85日)以上の「被保険者及び被扶養者」が出産したとき支給
1児出産につき42万円(内訳:出産育児一時金40万8千円+産科医療保障制度掛け金1万2千円)
産科医療補償制度(分娩に関連して重度脳性麻痺となった赤ちゃんが速やかに補償を受けられる制度)に加入していない医療機関等において出産した場合及び妊娠22週に満たない死産等の場合の支給額は40万8千円になります。
申請方法は二種類(分娩機関とのやり取りで、多額の出産費用を用意しなくて済む「直接支払制度」が便利!)
直接支払制度を利用する場合
 ①分娩機関との間で、直接支払制度に関する契約を書面で取り交わす。
 ②分娩後に①で取り交わした文書及び出産費用の領収・明細書を受け取る。
 ③出産にかかった費用と出産育児一時金の額にもし差額があれば、差額をけんぽ協会に支給申請する。
  出産費用≧出産育児一時金→申請不可
  出産費用<出産育児一時金→差額を協会けんぽに申請(提出書類等は以下参照)
 添付書類📎: 直接支払制度に係る分娩機関との合意文書のコピー
       分娩機関から交付される出産費用の領収・明細書のコピー
直接支払制度を利用しない場合→いったん、出産にかかった費用の全額を分娩機関に支払った後に支給申請します。
 添付書類📎: 分娩機関から交付される直接支払制度を利用していないことを証明する書類のコピー
       分娩機関から交付される出産費用の領収・明細書のコピー

いずれも、提出期限は「出産日の翌日から2年以内」になります。

【参考】出産育児一時金直接支払制度(協会けんぽHP)

🌼「出産育児一時金」の素朴なギモン Q&A
Q3.もし会社を退職したあとに出産した場合はどうなるの?

A3:資格喪失日の前日(退職日)までに継続して1年以上被保険者期間(任意継続被保険者期間は除く)があり、資格喪失日(退職日の翌日)から6ヵ月以内の出産であれば支給されます。ただし、資格喪失後の給付は被保険者であった人の出産が対象となり、被扶養者であった家族の出産は対象外です。

Q4.帝王切開になった場合、自然分娩時に比べ手術費もかかり、負担が多くなるけど、出産育児一時金以外で何か備えられる方法はある?
A4:帝王切開は公的医療保険の対象になりますので、治療、手術にかかる費用の自己負担分は基本3割となります。また、健康保険の高額療養費制度の対象になりますので、被保険者の標準報酬月額によって定められた自己負担限度額(例えば標準報酬月額が26万円以下で1か月57,600円)までの負担で済みます。窓口における自己負担を限度額までに予め抑えるためには、限度額適用認定証の交付を申請しておくとよいでしょう。

【参考】出産育児一時金について(協会けんぽHP)

③【出産手当金】健康保険から、女性被保険者が休業のため給与等が受けられないときの所得補償あり!

妊娠出産のため会社を休み、給与等が受けられない場合に支給(対象は女性被保険者のみで任意継続被保険者を除く)
【支給日額の計算方法】
標準報酬月額(※)÷30=標準報酬日額
(10円未満四捨五入)×2/3=支給日額(1円未満四捨五入)
支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額、なお支給開始日の以前の期間が12ヶ月に満たない場合は、次のいずれか低い額を使用して計算します。
ア 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
イ 協会けんぽの当該年度の前年度9月30日における全被保険者の平均標準報酬月額(令和4年度は30万円)
【支給額の計算例】
平均標準報酬月額18万円の場合:支給日額 180,000÷30×2/3=4,000円
産前産後休業期間(単胎で基本トータル98日) 4,000円×98日=392,000円
(なお、出産日が出産予定日より遅れた場合は98日にその分プラスされて計算されます。)
出産手当金の支給期間と①の産前産後休業期間は一致します!(健康保険と厚生年金保険の記録は繋がっているからです(;'∀'))
ただし、休んでいる期間に一部給与や役員報酬が出ている場合は、その給与が出産手当金の日額に満たないときのみ、その差額が出産手当金として支給されます。
提出書類:健康保険 出産手当金支給申請書
提出期限:出産手当金の支給対象期間内で、出産のため休んだ日ごとにその翌日から2年以内
出産手当金は、産前分、産後分など複数回に分けて申請することも可能です。ただし、事業主の証明欄については、毎回証明が必要です。
🌼「出産手当金」の素朴なギモン Q&A
Q5.会社を退職したあとも出産手当金は出るの?

A5:被保険者の資格を喪失をした日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間(健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があり、資格喪失時に出産手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていれば、退職後も支給されます。なお、退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失日(退職日の翌日)以降の出産手当金は支給されません。

Q6.事業主や役員でも出産手当金の対象になるの?
A6:出産手当金は健康保険からの給付になるので、女性被保険者であれば、雇用保険に加入できない事業主や役員の方も対象になります。ただし、役員報酬が出ている期間については支給されません。役員報酬については税務上で定期同額給与と言って、通常は同事業年度中に自由に変えられませんが、出産のため就労不能になった場合は、その期間につき、株主総会で役員報酬の支払いを停止する旨の決議をすることができます。役員報酬の支払いが停止になった期間については申請により出産手当金が健康保険から支給されます(役員報酬が停止になった期間の損金算入等については税理士さんにご相談ください(^^;))。

【参考】出産手当金について(協会けんぽHP)

オフィスこころの所見

以上、今回は女性の目線から、産前産後休業期間における社会保険の取扱いや給付について見ていきました🌟労働基準法と健康保険法/厚生年金保険法の取扱いが少し違うところがあり、ややこしいのですが、保険料免除から手厚い給付まで、働く女性にとっては比較的優しい制度設計となっています。今後、出産を控えられている方、または出産を控えられている従業員を雇う事業主様などはぜひ参考にしてください!

これでもし妊娠しても安心して出産できることが分かりました👶同じ会社にずっと勤めてきて、標準報酬月額も少しずつですが、年々増えていたので良かったです🍀

ずきんちゃんのキャリアプラン次第だけど、これからも長く勤めて、会社で重宝される人財になる選択肢もあったらいいわよね🌟ずきんちゃんなら、大丈夫よ🍀
女性活躍推進については国も力を入れいていますので、女性が出産育児または介護を経ても、引き続き活躍できる働きやすい職場であるように努める事業所に対する助成金などもあります。事業主様はそういったものも活用しながら、事業経営していけると良いですね。助成金についてはまた機会がありましたら、ご紹介致します(^^ゞ

最後までお読みいただきありがとうございました。オフィスこころでは、今後も身近な生活の中で、「こんなときどうしたらいいの?」という疑問に対する解決方法を少しずつ情報提供していきたいと思っています。少しでも誰かのお役に立てますように

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