みなさんこんにちは、毎日ぐったりするほど暑い日が続きますが、冷たい飲み物や果物が特に美味しく感じますね。
さて、前回に引き続き変形労働時間制についてお話しできればと思います。今回は「1か月単位」ではなく、基本「1年単位」で見ていく労働時間制になります。この1年単位の変形労働時間制ですが、厚生労働省の資料で導入企業が約3割と通常労働時間制に次いで高い採用割合になっていますよ。
Contents
1年単位の変形労働時間制の基本的仕組みを理解しよう!
そうなのよ、1か月単位と似ているようで似ていないところもあって、ややこしいんだけど、次から具体的な要件をみていきますね!
✅労使協定の締結及び就業規則などを変更すること
✅所定の様式により所轄の労働基準監督署長に届け出ること
なお、常時使用する労働者が10人以上の事業場は就業規則の作成・届出は必須となりますが、10人未満であれば必須ではありません。
ただし、労使協定を定めることと届出は労働者の人数に関わらず必須になります。
なお、労使協定で定める事項は以下のものになります。
①対象労働者の範囲
②対象期間および起算日
対象期間は1か月を超え、1年以内の期間に限ります。
③特定期間
②の対象期間中の特に業務の繁忙な期間を特定期間として定めることができます。この特定期間は、連続して労働させる日数の限度に関係があります。
④労働日及び労働日ごとの労働時間
労働日及び労働日ごとの労働時間は②の対象期間を平均し、1週間あたりの労働時間が40時間を超えないよう、また、労働日数、労働時間の限度(次項目でまとめて説明)に適合するよう設定する必要があります。
また、特定した労働日及び労働日ごとの労働時間を任意に変更することはできません。
⑤労使協定の有効期間
1年単位の変形労働時間制を適切に運用するためには対象期間と同じ1年程度が望ましいとされます。
【参考】1年単位の変形労働時間制に関する労使協定書記載例 (事業所で作成する様式)
1年単位の変形労働時間制に関する協定届記載例 (管轄労基署に届け出る様式)
(いずれも福井労働局HPより引用)
1年単位の変形労働時間制では労働日や労働時間はどうなっているのか?
労働日数の限度
対象期間が1年の場合→280日
対象期間が3カ月を超え1年未満である場合
→280日 × 対象期間の暦日数/365日(小数点以下切り捨て)
(※ただし、ここでは省略しますが旧協定がある場合の例外があります。)
1日及び1週間の労働時間の限度
②起算日から3カ月ごとに区切った1期間に、48時間を超える週の初日が3日以内であること
連続して労働させる日数の限度
労働時間の計算:割増対象の時間外労働はどのようにカウントするのか?
✅②1週間については、40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間
✅なお、途中入社や途中退社などの場合は、実際に労働した時間を平均して週40時間を超えた労働時間について次の流れに沿って割増賃金を支払う必要があります。
② ①で計算された法定労働時間の総枠と実労働時間を比較し、実労働時間の方が長い場合はその差を算出(日と週で残業時間として集計された時間数を除く)。
③ ②で算出された時間数を残業時間として、賃金清算する。
1年単位の変形労働時間制を採用するにあたっての実際の運用はどのようにすればよいのか?
まずは、対象期間のカレンダーを作成しましょう!
また、一度特定された労働日及び労働日ごとの労働時間を変更することができないので、導入にあたってはしっかり計画を立ててカレンダーを作成しましょう。
労使協定や就業規則を整えて、届出&更新をしましょう!36協定届も1年単位の変形労働時間制の人は別枠なので注意!
基本的仕組みのところでお話ししたとおり、導入にあたっては労使協定の締結と届出は必須になります。またそれにあわせて就業規則もあれば改定を行い、10人以上の事業所の場合は管轄の労働基準監督署へ改定の届出も必要になります。就業規則の規程例はモデル就業規則にも詳しく記載されていますので参考にしてみてください。シフトを対象期間の初日の30日前までに知らせる規程例などもあります。また、労使協定は締結期間が更新されるごとに(基本1年ごとに)同じ運用方法でも再度届出なければいけませんので届出漏れにはご注意くださいね。
【参考】モデル就業規則令和5年7月版(厚生労働省HP)P30~P33参照
また、36協定(時間外労働休日労働に関する労使協定)についても、1年単位の変形労働時間制を採用する従業員は別枠に記載することになっていますので、変更があればその届出を行いましょう。
なお、対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制による場合の限度時間は1か月42時間、1年320時間になります。
【参考】36協定届の記載例(厚生労働省HP)