Contents
- 1 65歳から老齢基礎年金、老齢厚生年金の受け取りがスタート!現在その年齢を迎える人の手続きはどうしたらよい?
- 1.1 厚生年金保険の加入期間が1年以上あり、既に特別支給の老齢厚生年金を受け取っている人は簡単なハガキ状の「年金請求書」を返送するだけ!
- 1.2 特別支給の老齢厚生年金が未請求の人もしくは厚生年金の加入期間1年未満で、他は国民年金の納付済み期間等とあわせて10年以上ある人は65歳で初めての請求手続きを行います!
- 1.3 その他豆知識①65歳以上で年金額が少ない非課税世帯の方は「年金生活者支援給付金」が受給できる可能性あり!
- 1.4 その他豆知識②障害年金の受給権者は「年金受給選択申出書」の提出が必要!
- 1.5 その他豆知識③遺族厚生年金の受給権者は、老齢厚生年金が優先的に支給され、差額がある場合のみ遺族厚生年金として支給されます!
- 2 働きながら年金を受け取るとき在職支給停止の基準は今までと変更なし!でも厳密に言うと65歳までと少し異なる点もあり。
- 3 令和4年4月年金制度改正により65歳以上の人で同時に厚生年金保険をかけている人に、年に1回の「在職定時改定」の仕組みが導入!
- 4 在職で厚生年金をかけるのは70歳まで!ただし、70歳以降も報酬が高い場合は在職支給停止の仕組みが適用されますので注意!
- 5 今年度から75歳まで繰下げできるようになったけど、繰下げしたい人はどうすればよい?
- 6 オフィスこころの所見
65歳から老齢基礎年金、老齢厚生年金の受け取りがスタート!現在その年齢を迎える人の手続きはどうしたらよい?
厚生年金保険の加入期間が1年以上あり、既に特別支給の老齢厚生年金を受け取っている人は簡単なハガキ状の「年金請求書」を返送するだけ!
今まで厚生年金保険(H27.9以前の共済年金加入期間含む)に1年以上加入されている方で、特別支給の老齢厚生年金(60歳代前半の老齢厚生年金)を既に受給されているか、請求手続きを済まされている方には、65歳の誕生月の初旬(1日生まれの方は前月の初旬)に、はがき形式の「年金請求書」が送られてきます。それを65歳の誕生月(1日生まれの方は前月)の末日までに原則郵送で提出することになっています。なお、最初の手続きのときに加給年金の対象者がいると申告されていた方には、引き続き生計維持しているかの申し立て欄がありますので、その対象者の名前などを記載します。なお、この年金請求書には老齢基礎年金、老齢厚生年金の繰下げを希望することの意思を申告する欄もありますが、繰下げを希望しない方は、何も記載する必要はありません。また、老齢基礎年金も老齢厚生年金も繰下げを希望する方は、そもそもこちらのハガキを提出する必要はありません。老齢基礎年金、老齢厚生年金のどちらか一方だけを繰下げ希望する場合は、希望する方に〇をつけておけば、希望しないほうの老齢年金は本来の65歳からスタートとなります。繰下げを希望した方は、66歳以降自分が希望するときに、原則年金事務所などに来所して、繰り下げの申出を行い、繰下げ請求の手続きをしていただくようになります。繰下げの注意点についてはあとで説明します(^^ゞ
【参考】65歳時の年金請求書ハガキ見本↓
特別支給の老齢厚生年金が未請求の人もしくは厚生年金の加入期間1年未満で、他は国民年金の納付済み期間等とあわせて10年以上ある人は65歳で初めての請求手続きを行います!
それでは、前回説明した特別支給の老齢厚生年金の受給権はあるが、まだ請求手続きをしていなかった人や、国民年金のみの加入や厚生年金保険の加入期間が1年未満などで65歳から初めて年金の受け取りがスタートする方はどうなるのでしょうか?その理由によって少し手続きが異なりますので以下説明します。
①特別支給の老齢厚生年金を請求していなかった人
本来の支給開始年齢のときに、「年金請求書(事前送付用)」がご自宅に届いているはずです。もし、何らかの事情で届いていない場合や紛失した場合でも請求書自体は、年金事務所等に行けばありますので大丈夫です。年金の時効は5年で、今からでも遅くありませんので、ご予約の上、年金の請求手続きを行いましょう。報酬が高くて特別支給の老齢厚生年金が全額止まってしまうような方でも、65歳からは老齢基礎年金がスタートしますし、こちらは在職には全く影響を受けません。また老齢厚生年金に関しても、報酬により在職支給停止の仕組みはありますが、経過的加算額など在職に影響を受けない部分もありますので、早めに手続きしておきましょう。また、繰下げを希望する場合も、本当に繰下げをしたほうがよいのか?いろいろな角度から検証したほうがよい(あとで概要を説明します(^^ゞ)ので、とりあえず、「権利はあるのに未請求の方」は、一度年金事務所等で相談してください。
②65歳で年金の受け取りが初めてスタートする方(10年以上の受給資格を満たしているが、国民年金のみの方または厚生年金保険の加入期間が1年未満の方など)
65歳のお誕生日月の約3カ月前に、緑色の封筒に入った「年金請求書(事前送付用)」がご自宅に届きますので、65歳の誕生日の前日以降に、原則お住いの管轄の年金事務所等でお手続きいただくことになります。郵送でも手続きは可能ですが、添付書類の不足などがあると、また郵送のやり取りになり時間がかかってしまうので、事前にご予約の上、必要な添付書類を確認して揃えて、窓口で提出するほうが確実です。
③65歳になってもまだ受給権が発生しない方(国民年金の保険料納付済期間または保険料免除期間と厚生年金保険期間をあわせても10年に満たない方など)
60歳のときに、その方の基礎年金番号に収録されている記録だけでは年金の受給資格期間が10年に満たない方には「ねんきんに関するお知らせ:年金加入期間確認のお願い」が届くようになっています。このような場合に確認するべきことはおおよそ以下のとおりです。
・例えば20歳から60歳までの間で、昭和61年3月までに厚生年金保険加入の配偶者であったり、平成3年3月までに昼間学生であったり、日本人の方で昭和61年4月以降に海外に在住していませんでしたか?その期間は本人は国民年金の任意加入期間であるため、「合算対象期間(通称カラ期間)」と言いまして、年金の金額には結び付きませんが、受給要件を確認するための期間としては足すことができる仕組みがあります。この他にも合算対象期間に含めることができる期間があります。【参考】合算対象期間(日本年金機構HP)
・昭和61年4月以降に厚生年金保険に加入の配偶者に扶養されていたが、国民年金3号期間の届け出漏れであった期間はありませんか?
・生活保護や障害年金2級以上を受給していた期間などは国民年金の法定免除期間になりますが、正しく記録が反映されているでしょうか?
・年金の社会保障協定の相手国で働いていた期間がある方は、それぞれの年金加入期間を相互に通算することができますが、その手続きは出来ていますか?
もし少しでも思い当たるふしがありましたら、一度年金事務所等で相談しましょう(婚姻期間を確認できる戸籍謄本などを持参するのがベストです)。また、60歳から65歳までの国民年金の任意加入、受給権を満たさない方の65歳以降の国民年金の任意加入(ただし昭和40(1965)年4月1日以前に生まれた人が対象)や60歳以降に厚生年金の適用事業所で働き厚生年金保険に加入することや70歳以降に厚生年金保険に高齢任意加入することによって、受給資格期間を増やす道もあります。年金の受給意思があるのであれば、なるべく早いうちに自分がどういう状況にあるかを把握して対策することが必要になります。
【参考】ねんきんに関するお知らせ:年金加入期間確認のお願いハガキ↓
その他豆知識①65歳以上で年金額が少ない非課税世帯の方は「年金生活者支援給付金」が受給できる可能性あり!
現在、65歳以上の方で以下を満たす方は、「年金生活者支援給付金」をあわせて請求することが可能です。
②同一世帯の全員が市町村民税非課税である。
③前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が881,200円以下である。
※ただし、日本国内に居住し、年金が全額支給停止になっておらず、刑事施設等に拘禁されていないことが前提となります。
【参考】年金生活者支援給付金制度について(厚生労働省HP)
その他豆知識②障害年金の受給権者は「年金受給選択申出書」の提出が必要!
障害年金を既に受給している方に、65歳時に老齢基礎年金、老齢厚生年金の受給権が出来た場合、以下のいずれかの組み合わせを選択することになります。
①障害基礎年金+障害厚生年金
②老齢基礎年金+老齢厚生年金
③障害基礎年金+老齢厚生年金
なお、障害厚生年金3級のみなど障害基礎年金の受給権がない方は、「障害厚生年金」か「老齢基礎年金+老齢厚生年金」の選択になります(「老齢基礎年金+障害厚生年金」の組み合わせは出来ません)。
その他豆知識③遺族厚生年金の受給権者は、老齢厚生年金が優先的に支給され、差額がある場合のみ遺族厚生年金として支給されます!
遺族厚生年金を既に受給している方に、65歳時に老齢基礎年金、老齢厚生年金の受給権が出来た場合は、ご自身の老齢厚生年金が優先的に支給されることになり、遺族厚生年金は、老齢厚生年金より年金額が高い場合に、その差額を受けることができます。65歳前のように、どちらか一方の年金を選ぶ選択届は不要になります。なお、遺族厚生年金より老齢厚生年金の年金額が高い場合は、遺族厚生年金は全額支給停止になります。また、65歳以降に新たに遺族厚生年金の受給権が出来た方も同様な仕組みになります。
image
65歳以上の方で遺族厚生年金がある場合の年金の受け取り方働きながら年金を受け取るとき在職支給停止の基準は今までと変更なし!でも厳密に言うと65歳までと少し異なる点もあり。
【事例研究✍】
「20歳~22歳まで大学生で当時(H3.3月まで)任意加入のため国民年金加入なし、22歳で就職して、同じ企業で62歳で定年退職になった40年厚生年金保険加入の方」の経過的加算額はいくらか?
定額部分(※)相当額 1,621円×480月(12カ月×40年)=778,080円…①
厚生年金保険加入期間の老齢基礎年金の額 22歳~60歳までの38年間(456月)→777,800円×(456/480)=738,910円…②
経過的加算額=①―②=39,170円
ちょっと知っておきたいポイント🌼
厚生年金保険に20年以上加入されている方が、65歳の時点で加給年金の対象者(年下で厚生年金保険の加入期間が20年未満または20年以上でも老齢年金の支給開始年齢に達していない人など)がいる場合、在職支給停止の仕組みにより報酬比例部分が全額止まってしまうと加給年金も支給停止になります。逆に報酬比例部分が1円でも発生すると加給年金の対象者がいる場合は、加給年金部分は支給されます(令和4年度は配偶者の場合388,900円/年)。また、厚生年金基金の加入期間がある方は基金の代行年金額も含めて、報酬比例部分が全額支給停止か一部支給停止か判断されます。
令和4年4月年金制度改正により65歳以上の人で同時に厚生年金保険をかけている人に、年に1回の「在職定時改定」の仕組みが導入!
在職で厚生年金をかけるのは70歳まで!ただし、70歳以降も報酬が高い場合は在職支給停止の仕組みが適用されますので注意!
今年度から75歳まで繰下げできるようになったけど、繰下げしたい人はどうすればよい?
繰下げすると年金額が増える→確かにそうなんですけど。。報酬が高い人、加給年金の対象者がいる人などはちょっと熟慮したほうがよいです。
令和4年4月より昭和27年4月2日以降生まれの方は、75歳までの繰下げが可能になりました。老齢年金の繰下げについては、【お役立ちミニ講座Vol.5】年金の繰下げってどうなの?繰下げについて徹底解説でもお話しましたので詳細はそちらを確認してください。ここでは、改めて今日の話の流れに従って、注意するポイントに絞って説明します。
繰下げで注意するべき方その①:厚生年金保険加入中で報酬が高く、在職支給停止になる人はココに注意!!
これについては、65歳以降在職で報酬が高い人の繰下げを年金機構にありますシステム上で試算すると、「え、これだけしか増えないの?」という額が出て来まして、私も年金相談で「何故?」と聞かれるのですが、言葉ではうまく説明できなく、適当な資料もないので、概要を掴めるものを自分で作りました(;'∀')ようは、65歳以降70歳未満の間、厚生年金被保険者として働き、老齢厚生年金を繰下げした場合、在職老齢年金の仕組みで支給停止されなかった額のみを繰下げすることになるので、給与、賞与の平均と老齢厚生年金の報酬比例部分の毎月の合計額が多いために、年金支給停止額が高い人については、繰下げ対象額が少なくなるため、繰り下げするメリットがあまりないという結論に至ってしまいます。
在職老齢の場合の繰下げの考え方繰下げで注意するべき方その②:自分が厚生年金保険加入期間20年以上で、年下で厚生年金保険20年未満の配偶者、または20年以上でもまだ老齢年金の支給開始年齢になっていない配偶者がいる場合は、繰下げすると、加給年金も受け取り出来なくなりますよ!
65歳で退職されたり、在職でも報酬がそれほど高くなく、在職支給停止にならない方は、加給年金を除く全部の老齢厚生年金額を繰下げ対象額として、1カ月繰下げすることで0.7%増やすことができるのですが、加給年金の対象者がいる方などは少し立ち止まって考えてください。本来65歳から加給年金の対象者がいた場合は、例えば配偶者ならば年間388,900円(令和4年度)が、その配偶者が原則65歳になるまでつくようになります(ただし、在職支給停止の仕組みにより、報酬比例部分の全額が支給停止になる方は配偶者加給年金はつきません。)が、繰下げするということは、その加給年金をその間受け取り出来ないことになります。1年間388,900円って結構大きいですよね?繰下げして増える金額はいくらになりましたか?加給年金がないと考えて、繰下げで元がとれるのは繰り下げた年齢から約12年後と以前説明しましたが、加給年金も加味して考えると、もっと先になってしまいます(;'∀')加給年金を捨てでも繰下げしたほうがよいでしょうか?年金は一人一人違うので、全ての方に当てはまるとは言えませんが、迷われる方は、一度年金事務所等で自分の実際の金額を試算してもらって、本当に繰下げするべきか考えてみましょう!