【お役立ちミニ講座vol.31】「同一労働・同一賃金」について、待遇差の理由を説明できますか? 今後の改正で労働者側に説明要求権利が発生/企業側は人材確保のためにも今のうちに概要を押さえておきましょう!
 みなさん、こんにちは!年末ぎりぎりの駆け込み投稿ですが、今年最後で4か月ぶりのお役立ちミニ講座更新になります💦
 さて、今年最後を記念すべく?、最新情報を踏まえた「同一労働・同一賃金」についてお話できればと思います。「同一労働・同一賃金」は働く人ならきっと一度は耳にしたことあると思いますが、この考え方は2020年4月の正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差をなくすための規定を整備した働き方改革関連法の施行から始まったものでありますが、ようやく5年が経過しようとしています。
 そこで、今年の11月に厚生労働省が、待遇に関する説明義務や均等・均衡待遇などについて事業主が講じるべき新たな対応を労働政策審議会に提言しており、近々その内容が盛り込まれたガイドラインが発出されるものと見込まれます。今日はその前にもう一度、「同一労働・同一賃金の基本的考え方」や概要をおさらいしておきたいと思います。
へええ、同じ働きに対して、同じ賃金をってことだと思うけど、実際うちの会社では、正社員とパートでは給与体系も違うし、賞与や通勤手当もパートさんはなかったりする。これを見直していくとなると、人件費も増大するだろうし、企業さんは大変だろうなあ。。
そうね、これは一見、中小企業にとっては死活問題だと思うのね。でもいつまでも旧態依然の給与体系のままだと人材確保の面でも企業側に不利になっていく未来も予想されるわけです。一足飛びにはできないけど、まずは今のうちに改めて同一労働・同一賃金って何なのか、おさらいして、今後の改正に備えられるよう、復習しておきましょう。

ぼくもイメージだけで詳しく分かってないことがあるから今日は勉強させてもらうね!

「同一労働・同一賃金」の定義と目的

「同一労働・同一賃金」とは、正社員と非正規雇用労働者(パートタイム・有期雇用・派遣労働者など)との間で、職務内容や責任の程度に応じて、賃金や待遇に不合理な差を設けてはならないという考え方です。
この制度の目的は、
  • 労働者の納得感・モチベーションの向上
  • 雇用形態にかかわらない公正な待遇の実現
  • 多様な働き方の促進と人材確保の支援
などが挙げられます。特に中小企業にとっては、人材の定着や採用力の強化にもつながる重要な視点です。

同一労働・同一賃金の法的根拠 雇用区分の名称による差ではなく実態を重視!

「同一労働・同一賃金」 は2020年4月1日に施行されたパートタイム・有期雇用労働法(正式には「短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」) の改正法によって新設された以下の条文が法的根拠になります。条文は興味のある方は法令を参照していただくとして、ざっくり言うと以下のような感じになります。
第8条 不合理な待遇の禁止→「均衡待遇」
→事業主は、短時間・有期雇用労働者の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間 において、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」と いう。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇 の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、 不合理と認められる相違を設けてはならないこととされている。
第9条  通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止→「均等待遇」
→職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者であって、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれる短時間・有期雇用労働者については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならないこととされている。

何だかまどろっこしいけど、要は、同じ職務内容や責任の程度、配置の変更の範囲であれば同じ待遇(均等待遇)で、その差があるとしてもその差に応じた待遇(均衡待遇)を行い、不合理な差を設けてはならないっていうことになるかしら。

ふむふむ、よく分からなかったけど、何となく見えてきたよ。均等は同じ労働条件なら賃金も待遇も全く同じようにすること、均衡はその差に応じた合理的な差にすること、要は業務内容や責任の程度、配置の変更の範囲に応じて、各レベルがつくとしたら、そのレベルに応じて、比例的な待遇になるようにしなさいってことだね。

しろ吉くん、説明の天才!

なお、この改正は、働き方改革関連法の一環として行われたもので、中小企業にも2021年4月から適用されています。
【参考】同一労働・同一賃金特集ページ(厚生労働省)

現在のガイドラインのポイント(基本給・手当・福利厚生など)

厚生労働省が示す現在のガイドラインでは、以下のような待遇項目ごとに「不合理な差を設けてはならない」とされています。
主な項目の基準

✅基本給:職務内容・能力・経験・成果などに基づく場合、同様の基準で支給されるべき。

✅賞与:業績や貢献度に応じた支給であれば、非正規労働者にも同様の評価基準を適用する必要あり。

✅各種手当:通勤手当、皆勤手当、役職手当、時間外手当など、支給の目的が正社員と非正規社員で共通している場合は、同様に支給することが求められます。 (たとえば、通勤にかかる実費を補填する目的の通勤手当は、雇用形態にかかわらず支給されるべきとされています。)

✅福利厚生・教育訓練  食堂・休憩室・更衣室などの施設利用、慶弔休暇、健康診断、育児・介護休業制度、病気休職、教育訓練などについても、原則として非正規労働者にも同等の利用機会を提供することが求められます。

なお、ここで言う不合理な待遇差の判断基準(職務内容・責任・配置の変更範囲など)は以下のとおりです。
① 職務内容     担っている業務の内容や責任の程度が同じかどうか
② 職務の変更範囲  将来的な配置転換・異動の可能性があるかどうか
③ その他の事情   勤続年数、能力、成果、会社の運用実態などを含めた総合的な判断

詳細はこちらでご確認ください。
同一労働・同一賃金ガイドライン概要

ここまで詳細に示されているんだ。。カルチャーショックだよ。うちの会社はまだ旧態依然の給与体系で全然追いつけてないと思うな。。社長は知っているのかなあ💦

実際のところ、これを全部見直すのって相当な改革になると思うのね。なので、対応が追い付いていない企業もたくさんあると思うわ。正社員とかパートとか契約社員とか、各企業によって名称も内容も役割も違ってくると思うのだけど、今一度、その「名称にとらわれず」、業務内容や役割の「実態」を全部見直して、この均等・均衡待遇が取れていくか確認する必要が今後出てくると思うわよ。

新しいガイドラインはどういったことが盛り込まれる予定?
待遇差の理由を客観的・具体的に説明できるかが第1ポイント!

 まだ確定ではないので、あくまで予定にはなりますが、今回厚生労働省が提示している案では主に以下のような内容が上記のガイドラインに加えて盛り込まれる予定となっています。

✅パート・有期雇用労働者などの雇入れ時に明示すべき労働条件のひとつとして、待遇差の理由などについて「事業主に説明を求めることができる旨」を追加
さらに、労働者からの求めがない場合についても、労働契約更新時などに、待遇差の内容・理由について本人が容易に理解できる資料を交付するなどの対応が望ましいとされる見込みです。

✅賞与、退職手当、各種手当、福利厚生等について差を設ける場合の具体的な判断基準について、最高裁判例等を元に明確化
 このうち、退職手当、無事故手当、家族手当、住宅手当、夏季冬季休暇、褒賞については今までのガイドラインでは示されていなかったのですが、新たに基準が示されそうです。
格差是正のための正社員待遇引き下げへの規制強化
 通常の労働者の労働条件を不利益に変更することなく、短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者の待遇の改善を図ることが求められる旨を明確化する記載が追記される予定です。いわゆる格差是正をもって、労働条件の不利益変更が当然に認められるものではないということです。ここは労働契約法が根拠になりますね。
 ✅定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者の取扱いについての判断基準の明記
 有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることは、パートタイム・有期雇用労働者法第8条の「その他の事情」として考慮される事情に当たりうるが、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違 が不合理と認められるか否かについては、個々の待遇ごとに 当該待遇の性質、目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化する記載を追記。
✅「通常の労働者としての職務を遂行しうる人材の確保及びその定着を図る」等の目的で待遇を行う場合の取扱い
 いわゆる「正社員人材確保論」のみをもって待遇差が不合理ではない と当然に認められるものではない旨を明確化するための記載を追記。今後は、益々主観的・抽象的な説明でなく、客観的・具体的な実態に照らして、待遇差が均衡・均等かどうかの説明が求められる時代になりそうです。
その他詳細については以下を参考にしてください。

また、正式に新しいガイドラインができたら、何かの機会にご案内しますね。それにしても上記だけでも企業は相当な対応を求められると思うのですが、今から前もって対策を行うときの方向性について次からお話しますね。

今後、企業が取るべき具体的対応とは(待遇差の説明義務・見直しの進め方)

【ステップ】     【内容】
①現状把握 正社員と非正規社員の待遇差を洗い出し、一覧化する
② 職務分析 各職種の業務内容・責任・配置範囲を整理し、比較する
③ 合理性の検証  ガイドラインに照らして、待遇差が合理的かどうかを確認
④制度の見直し 必要に応じて、雇用区分や各種規程、賃金制度の見直しを検討
⑤従業員への説明 待遇差の理由を明確にし、丁寧に説明・対話の場を設ける。(説明資料の作成)

なお、厚生労働省では業界別に不合理な待遇差解消のための自主点検マニュアルが作成されていますので、参考にしてください。
【参考1】不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)
【参考2】WEB上の自主点検ツール(Excel:4MB)※不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」を参照しながら、同一労働同一賃金に向けた自社の取組状況を点検することができます。

選ばれる企業になるために、まずは一歩行動することが大事!
何か参考になることはない?

 企業は、この見直しによって、現実的な問題として、いわゆる非正規社員の待遇はあがり、正社員の待遇は下げられず人件費が増大するという経営的に影響を及ぼす可能性も高いわけです。ただ、これだけライフスタイルも多様化する中で、人材確保の競争力を強化する必要もありますし、また働く人が公平に評価された賃金を受けることで、仕事のモチベーションをあげることは、不安定な中小企業が安定した人材を確保するためにも良い影響を及ぼします。より長期的な目線で、生産性向上に取り組むと共に、選ばれる企業になるためにどうしたらよいかを考えるにはよいきっかけになると思いますので、ぜひ前向きに検討していただきたいところです。
 ここで社労士目線で、ちょっとした参考になる情報をお知らせします。
1.雇用区分の制度自体を見直してみるとき
→「多様な正社員制度」の活用
現在のパートタイム・有期雇用労働者を勤務地限定/職種・職務限定/短時間などの一定の条件を付した正社員に転換することが考えられます。これにより、待遇差の問題を根本的に解消しながら、個人のライフスタイルによる柔軟な働き方を選択することが可能になります。
2.正社員とパートタイム・有期雇用労働者との間の基本給に関する均等・均衡待遇について考えたいとき
→まずは「職務分析・職務評価」を行ってみる
職務分析・職務評価とは、正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の基本給について、待遇差が不合理かどうかの判断や、公正な待遇を確保するため、賃金制度を検討する際に有効です。 職務分析・職務評価を通して、まずは正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間の基本給に関する均等・均衡待遇について考えてみませんか。
なお、都道府県働き方改革推進支援センターでは、職務分析・職務評価の手法をご理解いただくための取組支援を行っています。
【参考】多様な働き方の実現応援サイト(職務分析・職務評価)
3.正社員とパートタイム・有期雇用労働者で共通の雇用管理制度や賃金制度を設けることを検討したいとき
→人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)やキャリアアップ助成金(賃金規定等 共通化コース/ 賞与・退職金 制度導入コース )等の活用
これらの導入には自社検討の他、社労士やコンサルなどに入ってもらうことも考えられると思いますが、その場合は費用等も必要になります。その費用を一部補助できるものとして、計画的に整備を行っていくと助成金等を活用できる可能性があります。 
✅人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)
事業主が、雇用管理制度(賃金規定制度、諸手当等制度、人事評価制度、職場活性化制度、健康づくり制度)などを計画的に導入した場合に、受給できる可能性があります。
【参考】雇用管理に助成金を活用しませんか(リーフレット)
✅キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース/ 賞与・退職金 制度導入コース)
有期雇用労働者等と正規雇用 労働者との共通の賃金規定等を 新たに規定・適用した場合や有期雇用労働者等を対象に 賞与・退職金制度を導入し、 支給または積立を実施した場合などに、受給できる可能性があります。
【参考】キャリアアップ助成金(令和7年度リーフレット)
※なお、先に説明した多様な正社員制度や職務分析・職務評価でもキャリアアップ助成金を活用できる場合があります。
詳しくは各都道府県の労働局の助成金センターなどにも相談してみるとよいでしょう。

具体的な情報をありがとう~後ろ向きな事業主さんを前向きにするように頑張ってみるね!

しろ吉くん頼むよ、うちの社長にも紹介して!

オフィスこころの所見

さて今日は、今後避けて通れなくなるであろう「同一労働・同一賃金」の問題についてあえてクローズアップしてみました。ただ、ガイドラインは示されていると言っても、一つの企業をとってもどれも同じところはなく、雇用形態・賃金形態など業種別に様々な背景があると思うのです。人件費増大などの経営への影響も考えられますが、長期的な目線で、生産性向上に取り組むと共に、選ばれる企業になるためにどうしたらよいかを考えるきっかけにしていただければと思います。

これまでの慣例的な制度がそのまま令和まで続いているようなところは、一旦立ち止まって、未来にも発展し続けられる制度に変えていくことが求められますね。
一長一短に変えられるものでないからこそ、ここでじっくり見直すことができれば、選ばれる企業に一歩近づくこともできるかもしれないですし、ここで変えなければ衰退する未来も見えるかもしれません。今日、紹介しました情報を参考に、早めの見直しのスタートを前向きに切っていただければ幸いです。
🌷Pickup【お役立ちミニ講座】