
みなさんこんにちは!立秋が過ぎると、少し暑さが和らいだ気がしますが、まだまだ暑い日は続きそうですので、体調管理には気をつけてくださいね。
さて、今日はこれを読んでいる方が使用者であれ、労働者であれ、雇うとき、雇われたときの必須の書類といえば、雇用契約書や労働条件通知書になると思いますが、ちゃんと保管されていますか?何が書かれているか知っていますか?どこに行ったか分からないとなると、後々のトラブルの原因ともなりかねないので、今日は改めて「雇用契約書」「労働条件通知書」とは何か?というところと最新のトレンドについてお話しできればと思います。



Contents
まずは雇用契約書と労働条件通知書の違い、理解していますか?
まず基本的なところですが、雇用契約書(または労働契約書)は労使間の契約書であり、労働条件通知書は使用者から労働者への通知文書です。
両者は内容が重なる部分もありますが、法的な性質が異なります。
| 書類名 | 法的性質 | 労働者の署名押印 | 提示義務 |
| 雇用契約書 | 契約書(双方合意) | 必要 | 任意 |
| 労働条件通知書 | 通知書(使用者から) | 不要 | 義務 |


絶対的に必要な労働条件通知書の内容について掘り下げて見て行きましょう!
労働条件通知書は労働条件基準法第15条第1項により、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」とあるので、それに基づく労働条件を明示した書面(書面交付が推奨されています)になります。また「絶対的に明示すべき事項」と「相対的に明示する事項」が労働基準法施行規則で定められております。


要は、「制度があるなら説明が必要」「制度がなければ説明不要」ということですね。
✅絶対的明示事項(赤ラインマーカー部分は2024年4月からの追加事項)
• 労働契約の期間(有期労働契約を締結する場合は、通算契約期間または更新回数の上限を含む)
• 就業場所・業務内容(変更の範囲を含む)
• 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩、休日、休暇
• 賃金の決定・計算・支払方法、締日・支払日・昇給
• 退職に関する事項(解雇の事由含む)
その他、無期転換申込権が発生する有期労働契約更新時の明示も義務付けられています。

このとき、会社は『無期転換申込ができます』ということと、『無期転換後の労働条件』を、書面で明示しなければならないということですね。
ちなみに、労働者が無期転換を申し込まなくても、以後契約更新のたびにこの明示は必要になります。
【参考】2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました!(厚生労働省リーフレット)
施行規則で定める上記の他、パートタイム労働者・有期雇用労働者の場合は、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第6条」により以下の事項も絶対的明示事項になります。こちらも忘れずに明記しておきましょう。
• 昇給の有無
• 退職手当の有無
• 賞与の有無
• 相談窓口(相談担当者の氏名、役職、部署等)
✅相対的明示事項
• 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払方法、支払時期
• 臨時に支払われる賃金・賞与などに関する事項
• 労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項
• 安全衛生に関する事項
• 職業訓練に関する事項
• 災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項
• 表彰・制裁に関する事項
• 休職に関する事項
【参考】労働条件通知書ひな形格納場所(厚生労働省HP主要様式ダウンロードコーナー内)


これらの事項を記載した上で、雇用契約書を兼ねるというのもありですし、労働条件通知書とは別に、雇用契約書を作成するのもありです。その場合、雇用契約書は「契約の合意内容」を示す法的文書です。したがって、労使間で合意した“基本的かつ重要な条件”を中心に記載することになります。 労働条件通知書は厚労省のひな形で示す通り「網羅的・詳細」に、雇用契約書は「合意の要点・簡潔に」という意味合いで捉えたらよいと思います。色んな書類が増えるのも管理が大変ですので、オフィスこころとしては両者兼用を基本的にはお勧めしています。
雇用契約書・労働条件通知書に関する様々な疑問を解決してみましょう!
Q&A① 雇用契約書(兼労働条件通知書)に記載がなくて、就業規則に記載がある場合はどちらが優先になりますか?
雇用契約書(兼労働条件通知書)に記載がなく、就業規則に記載がある場合、労働者にとって有利な方が優先されます。これは、労働契約法第12条に基づく原則です。
⚖️ 優先順位の基本ルール
| 比較対象 | 優先される内容 |
|---|---|
| 雇用契約書が就業規則より有利 | 雇用契約書が優先される |
| 就業規則が雇用契約書より有利 | 就業規則が優先される |
| 雇用契約書が就業規則より不利 | その部分は無効となり、就業規則の内容が適用される |


Q&A② 労働条件通知書は絶対交付しないといけませんか?また書面で渡さないとだめですか?
現場採用や短期雇用が多い業種では「とりあえず働いてもらう」というケースも少なくありません。しかし、労働条件通知書の交付は雇用形態に関係なく義務です。
特に先に示した絶対的明示事項は、昇給の有無を除いて労働基準法施行規則により書面で明示しなければならないとされています。ただし、労働者が希望した場合は、電子メール等の送信による交付も可とされますが、労働者がPDF等でその記録を出力することにより書面で作成できるものでなければなりません。
Q&A③ 労働条件通知書は労働条件が変わったらその度に交付が必要ですか?
労働条件通知書は労働条件に変更があった場合、その都度交付することが原則的に求められます。
ただし、変更の内容や範囲によっては「変更通知書」などで対応することも可能です。
✍️ 実務対応のポイント
| 変更内容 | 対応方法 |
|---|---|
| 契約期間、賃金、就業場所などの主要条件 | 変更通知書または新しい労働条件通知書を交付 |
| 昇給など軽微な変更 | 書面通知が望ましい |
| 労働者に不利益となる変更 | 原則本人の同意を得る必要あり(労働契約法第8条) |
特に有期労働契約の場合は、更新の度に新しい契約期間他その他条件を記載した労働条件通知書を交付しておきましょう。無期雇用の場合には、変更内容・変更日・理由などを明記し、変更通知書を交付するのが一般的です。なお、労働条件の不利益変更については、本人の同意が原則ですが、就業規則の変更によって周知させる方法もあります。こちらはまた労働判例などにもからむところで複雑になるので、別の機会がありましたらお話しますね。とにかく「前と同じ条件で更新したから大丈夫」と思っていても、後々のトラブルにつながることがありますので、口頭だけで済ますのではなく、書面で通知(または契約)しておきましょう。
Q&A④ 内定段階で労働条件を明示する義務はありますか?
職業安定法第5条の3第1項により採用時に労働条件は明示することが義務付けられています。採用時の条件が募集時に提示した条件と異なる場合は、労働契約を締結する前にその内容を求職者に明示しなければなりません。また、判例では内定=労働契約締結ともみなされるケースがありますので、実務的には内定通知書と一緒に労働条件通知書を交付するのが望ましいです。その場合、就業場所や業務内容が未定の場合は「○○支店または本社勤務の可能性あり」などと記載して、確定したら、改めて明示・交付ということでもよいでしょう。
雇用契約書・労働条件通知書のトレンドは?オフィスこころからの提案
さて、ここまでいかに雇用契約書・労働条件通知書が大事かは分かっていただけたと思います。ですが、実際のところ、雇用契約書・労働条件通知書に不備があったり、法改正についていけていなかったり、ひどいところではそれ自体が存在しない、後から助成金のために遡って作ったという企業もあるようです💦また、有期労働契約の更新を忘れていたというのは、まあまあ散見される話になります。
そこでオフィスこころからの提案としては、
①雇用契約書・労働条件通知書のテンプレート整備
ご案内した厚労省の労働条件通知書のテンプレートですが、正直言うとこれを活用すると少し煩雑過ぎませんか?このテンプレートを使用している事業所様も多いと思いますが、色んな雇用形態、賃金条件に対応するように作成されているため、余計なことがかかれてあったりとそこを消して行かないと、労働者にとっては何を記載しているのかが分かりにくくなっています。絶対的明示事項は抑えつつも、企業独自の雇用形態であったり、条件を出来る限り労働者に分かりやすい形で作成されるのが望ましいです。ネットにも無料のテンプレートなどはあふれかえっていますが、労働条件通知書だけにするのか、雇用契約書も兼ねるようにするのか、その場合は、労使双方のサイン欄なども必要になるので、雇用形態別に企業独自のひとつの型というのを決めて作成しておくと、管理しやすくなると思います。
②クラウド型の労務管理システム等導入による履歴管理・電子交付で更新忘れを防止!
さて、①のテンプレートですが、最近ではクラウド型の労務管理システムでも作れるというのをご存知でしょうか?オフィスこころが常々お勧めしている勤怠管理、給与計算、労務管理のクラウド型システムの中には、雇用契約書や労働条件通知書を作成できて、電子交付(または契約)ができる仕組みがあるものが増えています。またそのシステムの特徴により、労務管理の中に含まれているものと、契約書は別にオプションで契約が必要だったりするものとがあります。まだ、システムを導入していない事業所様は、導入する際にはそのシステムで雇用契約書や労働条件通知書の作成や電子交付(契約)もできるか?という視点もあわせて持ち合わせた方がよいかもしれません。なお、システムに組み込まれている場合、更新期限が近付いたらお知らせされるという機能が通常ありますので、そうなれば更新忘れも防ぐことができ、一石二鳥ですよね!これにより、事業主の管理負担を減らしつつ、従業員との信頼関係も築きやすくなります。


オフィスこころの所見

雇用契約書や労働条件通知書は、単なる書類ではなく、労使間の信頼を築く土台です。これにより起こるトラブルもありますので、使用者は記載事項に誤りがないか充分注意すべきですし、更新忘れなどは正直あってはならないことになります。また、労働者側として見ていただいている方は、今一度自分の労働条件通知書や雇用契約書はどうなっているのかを、就業規則とあわせて確認しておきましょうね!
また、最後にご提案しましたが、オフィスこころでは雇用契約書や労働条件通知書はクラウド管理をお勧めしております。まずは勤怠管理からなのは変わりませんが、どうせ導入するなら色々なことが一気通貫でできることを見越して導入するのが理想的ではありませんか?オフィスこころは世にある様々なシステムを可能な限り現在進行形で実際に試しており、その機能差、作成しやすさなども、客観的視点からお伝えすることはできると思います。どれも一長一短ありますが、何を重視するかによって選ぶポイントも変わってきますので、必要であればまずは来所無料相談からご利用ください。












